規模デカすぎる“討ち入り!?” 農業トラクター1400台が首都に集結、どうやって実現? 英国らしい「百姓一揆」の舞台裏

2025年2月、英国全土から首都ロンドンにトラクター1400台などが集結し、農家によるデモが行われました。このような大規模なトラクターデモは、どのようにして実現したのでしょうか。

お祭り感覚で平和的デモ

 これほどの大規模なデモでロンドンでは大渋滞を巻き起こしながら、「平和的なデモだった」と主催者ウェブスター氏は主張します。「デモ隊が救急車の進路を邪魔した」というSNSが拡散されましたが「フェイクニュースだったことが確認されている」そうです。

 実は3月4日にもまた農家によるデモがありました。2月のデモに懲りたロンドン警視庁が「トラクター7台以上のデモ参加は禁止。違反者は逮捕する」と通達を出したことから、数千人の農業従事者が徒歩でホワイトホールを行進する大規模デモとなりました。

 デモ主催者へのインタビューを通じて見えてきたことは、いずれのデモも大規模集会でありながら、お祭りのような楽しい要素を盛り込んだことが、警官隊との衝突など暴力沙汰にならなかったことの秘訣だったようです。

 2月のデモの際には、参加者の農家が、当日の準備の様子をSNSで拡散しています。それによると、いすゞの英国正規ディーラーであるハント・フォーレスト・グループや、まさに今回の税制改革のターゲットともいえる、ロンドン郊外に広大な農地を保有するアイリフ男爵家が運営に関わる企業などが、デモ当日の朝にキッチンカーを用意し、ロンドン郊外に結集したデモ隊にハンバーガーや豚の丸焼きなどを振る舞ったようです。

「お宝」ともいえる年代物のビンテージ・トラクターが数台、デモにかこつけて披露されたのも話題を呼びました。貴重なトラクターゆえ、トレーラーに搭載して官庁街の脇に横付けされ、そのほかの現役トラクターと並んで路面に展示されました。

 また、農家の子供たちも自前のオモチャのトラクターにまたがってデモに加わったようです。

 このように、労働党と保守党の政争に端を発し、イギリス社会の分断を象徴する側面もあったデモでしたが、あらゆる農業従事者が家族ぐるみで参加できる「イベント」にして、みんなで楽しんだようです。イベント企画上手なイギリス人らしい「令和の百姓一揆」の舞台裏でした。

【写真】トラクターのイメージ

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