なぜ「ジムニー5ドア」は55年も作られなかったのか? 「あえて流行に乗らない戦略」を動かした

実はジムニーが開発されて約55年、「ジムニーノマド」のような5ドアタイプが登場したのは今回が初めてになります。なぜ今だったのでしょうか。

現行ジムニー なぜここまで人気なの?

 では、ジムニーのどの点が優れているのでしょうか。

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ジムニーノマドのカラーのひとつであるキネティックイエロー(画像:スズキ)

 ジムニーは1970年に初代モデルが登場し、199の国と地域で販売されてきました。販売台数はシリーズ累計で約350万台にものぼります。歴代ジムニーが世界で愛されてきた理由はコンパクトなボディサイズでありながら、高い悪路走破性を誇っていることです。誕生当初より、この性能と機動性の高さがハンターや林業業者などに「このボディサイズだから入っていける」と愛されてきたのです。

 こうした同車誕生当初からの魅力を、2018年に登場した現行モデルも受け継いでおり、現行ジムニーのデザインコンセプトも専門家が愛用する「プロの道具」となっています。そのため機能に徹した、飾らない潔さが追求されました。

 常時四輪駆動のフルタイム4WDではなく、後輪駆動と4WDを選択できる、パートタイム4WDを採用し、フレームも悪路走破性が高いとされる伝統的なメカニズムを採用しています。そのため舗装路面での乗り心地や燃費性能はあまり優れていません。これらの性能を犠牲にしても、元来持っている性能が求められるのがジムニーなのです。

 そうした元来からの魅力に加え、現行のジムニーはデザイン面でも初代や2代目のような角ばったデザインに回帰。加えて、ジムニー伝統といえる丸形ヘッドランプや5スロットグリル、クラムシェルボンネットなど旧デザインを活かしつつ、現代風に落とし込みました。

 2010年代後半以降、どんどん丸みを帯びてきたSUVとは逆の発想で勝負した訳ですが、無骨な部分を残しつつも新しさを感じるデザインが、既存のファンのみならず多くの人に受け入れられ好評を集めることになりました。

 先述したように、ジムニーは舗装路面での乗り心地や燃費が優れているという訳ではありません。そのため、普通ならばライトユーザー層にはマッチした性能を持っていないクルマになります。

 ですが、そんな不利な条件を上回るほどデザインが好評となっているのです。いかにデザインが売れるクルマにとって大切か、ジムニーノマドの登場はそれをとても強く理解させられる出来事と言えます。

【画像】急いで作ってます! これが、インドのジムニーノマド生産工場です

Writer:

1997年生まれ、日本自動車ジャーナリスト協会(AJAJ)会員。自動車専門誌やウェブ媒体、ファッション誌などで、新車情報からカスタムかー、旧車、カーライフお役立ちネタまでクルマに関して幅広く執筆。自身でのレース活動も行っている。

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