東海道・山陽新幹線の「仕事席」倍近く値上げへ! それでも利用価値はあるのか?「グリーン車でいいじゃん」とはならなさそうなワケ
東海道・山陽新幹線のビジネス向け座席「S WorkPシート」が、2025年5月から値上がりします。通常の指定席より広いスペースとプライベート感がウリですが、グリーン車と何が違うのでしょうか。設備や値段を比較します。
「S WorkPシート」の弱点があった
一方、座席のリクライニングは「S WorkPシート」では通常の半分程度に抑えられています。これは客層に合わせ後部座席のパソコンへの接触防止などを考慮したようです。作業をするには良いですが、移動中にゆったり過ごすにはやはりグリーン車にかないません。
また、普通席に対して1200円(改定後は2000円)を追加して、1.5人分の空間は得られるものの、リクライニングについては目をつぶる――このあたりに関しては好みや目的で分かれそうなところですが、長距離は辛そうです。荷物が少なく身軽で、作業もない時は通常の普通席の方が良さそうです。
そして、これは「S WorkPシート」の弱みともいえるポイントですが、N700Aは窓側席以外にコンセントがないのです。仕事を進めたい時にこれは少しきついかもしれません。
ただし、N700Sは全席にコンセントを設置しているので、この心配はありません(しかも下り列車のC席、上り列車のA席ではB席の肘掛けコンセントも使えてしまいます)。急ぎの場合は車両を選ぶ余裕がない時もありますが、意識しておくとより快適に過ごせます。
ちなみに、料金面では「S WorkPシート」ならではの強みがあります。それは値段が一律であるということ。つまり、利用区間が東京~新横浜間だろうと、東京~新大阪間だろうと、現行1200円、改定後2000円なのです。
対してグリーン車の料金は、東京~新大阪間の自由席運賃に+5720円(計1万9590円、正規料金)となっています。だったら長距離になるほど「S WorkPシート」の方がお得。もちろん、設備を踏まえた上ではありますが、この値段を見る限り魅力的です。
身軽な移動や急ぎで飛び乗る時の普通席、コワーキングスペースともいえる「S WorkPシート」、ゆったり快適な上質空間のグリーン車と三者三様の個性が見られた今回の比較。値上げが迫りつつある「S WorkPシート」ですが、改定後も2000円の追加でこの居心地を確保できるのであれば、利用価値は高いといえるでしょう。座席の争奪戦は続きそうです。
Writer: 和田 稔(鉄道ライター)
幼少期、祖父に連れられJR越後線を眺める日々を過ごし鉄道好きに。会社員を経て、現在はフリーの鉄道ライターとして活動中。 鉄道誌『J train』(イカロス出版)などに寄稿、機関車・貨物列車を主軸としつつ、信号設備や配線、運行形態などの意味合いも探究する。多数の本とNゲージで部屋が埋め尽くされている。
社内規定で出張時の移動にグリーン車の利用を認めてもらえない会社もあるでしょうから、そういう意味でもPC仕事がしやすいSwork車両は一般の指定席の区分に当てはまるので利用しやすいんですよね