なぜ?「トランプ関税」実は中国の航空市場に有利に働く可能性も 現状は「新しい飛行機引き取らない」混乱に
トランプ米政権による貿易相手国への高関税で、中国がボーイング製の旅客機の受領を延期するなどの報復措置を講じ始めました。ただ、今回の“騒動”は将来の中国に有利に働く可能性があるかもしれません。
すでに生じている「引き取り控え」
トランプ米政権による貿易相手国への高関税で、世界経済は混乱ともいえる状況に陥っています。当然、航空業界と航空機産業にもそれは及び、トランプ大統領の最大のターゲットである中国では、アメリカ・ボーイング製の旅客機の受領を延期する“引き取り控え”が生じている状況であるとも報じられています。今後、この影響は世界の航空市場に、どのような影響を及ぼすのでしょうか。

トランプ大統領ら米国政府側は、今回の措置が同国にメリットをもたらすものと考えているようですが、もし仮にこの措置が続くなか、中国がこれに耐え続けたならば、今回の措置は中国に有利に働く可能性があるかもしれません。
米国は貿易相手の国や地域からの輸入品に一律10%の関税「世界共通関税」をかけたうえ、米国が貿易赤字となる相手国には、関税率をさらに上乗せするとした措置を講じました。こうしたなか、中国は145%の追加関税が課されたというわけです。一方で、中国も真正面から対抗し、報復として米国への追加関税を125%まで引き上げるなど、先行きが不安な情勢となっています。
航空業界においても、関税の引き上げにともない、中国政府がボーイング機の納入を一時停止するよう航空会社へ指示。一部の航空会社は予定していた787の売却を取りやめたと伝えられています。
こうしたトランプ関税による納入の一時停止は、米国内でもエアバス機に対して起きていますが、中国にとっても事態はマイナスです。新しい機材への更新は先延ばしにされ、燃費が悪化する古い機材は旅客サービスも行き届きません。劣化した部品は安全運航に支障を与え、欠航や遅延の増加につながります。
いわば、航空機という交通インフラを抑えられた中国は、エアバス機に切り替えようにもすぐの納入は期待できず、自国で実用化したジェット旅客機も今のところ、リージョナル機のC909と小型旅客機のC919のみです。そのなかには、エンジンがアメリカ製のものもあり、こちらにも影響を及ぼしそうです。このため、直近は中国が航空会社を中心に苦慮するでしょう。
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