航空大学校「筆記試験ナシの女子枠」設置に波紋広がる 「あらぬ性差別」につながらないのか?
航空大学校が女子生徒を増やすために、新たな選抜方法を導入した「女性枠」を設置します。この基準について、現役パイロットをはじめ、業界内で疑問の声が多く挙がっています。
従来枠を減らして「筆記試験免除」の女性枠設置
未来のエアラインパイロットを養成する唯一の国立養成機関で、パイロットになるための“黄金ルート”のひとつである「航空大学校」が、女子生徒を増やすために女子入学枠を設けると発表しました。この選抜方法について、現役パイロットをはじめ、業界内で疑問の声が多く挙がっています。

今までの入試では筆記試験、適性試験、身体検査と面接が行われてきました。今回の女子枠導入にともなって、現在は男女平等の選考基準で毎年108人の新入生が選抜されてきた入試選考方式が変更されるのです。
今回発表された入試制度では新たに定員20名の女子枠が新設され、これにともなって、これまでの選抜方法で募集される定員は、108人から78人に減ります。問題なのは女子枠の選考方法です。ここでは、パイロットの資質には不可欠な理数系の学力と英語力を査定する筆記試験が完全に免除になるのです。
筆者の経験から間違いなくいえることは、訓練頻度にもよるものの、航空機の基礎的な操縦能力は比較的短期間で習得できる一方で、航空機の運航に必要な英語力は、長期の海外滞在経験でもないかぎり短期間で習得することは難しいといえます。
というのも、管制塔との無線交信では原則英語で行われますので、英会話を用いた、コミュニケーションスキルが必要です。国内空港では大半が定型文のやり取りで済むものの、たとえば現場に出た後の海外空港での管制官とのやり取りでは、英会話を用いたより高度な折衝スキルが求められることもあります。さらに、航空機の取り扱いマニュアルや運航情報に関しても英語で書かれているため、英語の理解のほかに文章の読解能力も求めらます。
今回の発表については、現役パイロットをはじめとする業界関係者から多くの声が集まりました。そのなかから筆者が聞いた意見を以下に紹介させていただきます。
・航空大学校は現状、既に男女で区別のない公平な試験を実施しており、男性でも女性でも同様の基準を満たせば入学できる。かつてのいくつかの医大のように、合格基準に達している女性であっても不合格にしているなどの行為をしているということもないのであれば、現在すでに航空大学には性別によるハードルの差は存在しないといえ、わざわざ女子枠を作る必要はない。
・女子枠の試験内容が妥当であるとするならば、男性は妥当なラインを超える内容の試験を受けねばならず「男性差別」と言える。さらに逆に妥当でないとするならば、「女性には従来の試験における能力が男性より劣っている」という思想のもとに女子枠が作られていると言え、これはむしろ「女性差別」と言える。つまりいずれにせよ、女子枠の存在自体が「男女いずれかへの性別による差別」に当たる。
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