デカすぎて東京に近づけません! JAMSTECが誇る「巨漢」に乗ってきた 船体の“底なしプール” 何のため?
富士山の麓に広がる駿河湾。そこに面した清水港に日本最大級の探査船がいます。JAMSTECが保有する「ちきゅう」は長さや重さだけでなく高さもビッグ! なぜ、ここまで大きいか実際に乗ってハナシを聞いてきました。
「動いちゃダメ!」ピンポイントで留まるための特殊な装備
過去、「ちきゅう」はオーストラリア沖や東アフリカ沖など、日本から遠く離れた場所でも活動しており、また民間企業の業務を請け負うなどもしているとのこと。ミッション海域までに長駆足を運ぶ必要があるのはもちろんのこと、その役割上、到着したら今度は、同一海域から動かず、長期にわたって留まり続けなければなりません。乗員は数か月ものあいだ、洋上生活を余儀なくされることもあると言います。

なお、海底を掘るために同じ場所に船を留め置きますが、その際「ちきゅう」はアンカー(錨)を使っているわけではありません。強い風や潮の速い海域でも同一地点に留まれるのは、「自動船位保持システム(DPS)」を備えているからです。
そもそも「ちきゅう」には、舵(ラダー)がありません。では、どうやって回頭しているかというと、それは複数備えた「アジマススラスタ」を動かすことで行っています。「アジマススラスタ」とは、水平方向に360度回転可能なポッドにプロペラを装備したもののこと。「ちきゅう」は、これを船底の船首側に3基、船尾側に3基、計6基備えており、それぞれ任意の方向に向けることで前後進や左右の回頭だけでなく、波や風の強いなかでもヘリコプターのように同一エリアに留まることが可能です。
このアジマススラスタと、人工衛星によるGNSS(全地球測位システム)および、海底に設置されたトランスポンダ(音響応答装置)の測位によって正確に割り出された位置データを組み合わせることで、DPSで自動的に同一地点に留まることができるのです。
「ちきゅう」は現在、日本とヨーロッパが主導する国際海洋科学掘削計画(IODP3)の主力船として用いられています。IODP3のプロジェクトには、巨大地震発生のしくみ、将来の地球規模での環境変動の解明、海底下生命圏をはじめとする未踏のフロンティアへの挑戦などがあります。
「ちきゅう」が竣工したのは2005年7月29日のこと。すなわち今年(2025)年は「ちきゅう」が活動を開始してからちょうど20年の節目でもあります。世界最高水準の科学掘削能力を備える日本唯一の船として、今後も同船は人類の未来を拓くさまざまな海洋研究のために活動し続けます。
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