待望の進水だ! デッカい砕氷研究船「みらいII」 北極は未知の海域「データ全然ないんです」
このたび進水した北極域研究船「みらいII」。同船は日本初の砕氷機能を持つ研究船として建造されていますが、同船が果たす役割は単に北極海の観測にとどまらないようです。じつは国家戦略にも直結するスゴい船でした。
南極と比べると圧倒的にデータがない北極海
海洋に関する幅広い研究と調査を担っているJAMSTEC(海洋研究開発機構)の新たな船「みらいII」が2025年3月19日に進水しました。ジャパンマリンユナイテッド(JMU)横浜事業所磯子工場で開かれた命名・進水式には天皇皇后両陛下の長女、愛子さまが出席され、支綱をご切断されました。

北極域研究船「みらいII」は、砕氷機能と船上で海洋環境の研究を行える本格的な観測機能を併せ持つ日本初の砕氷観測船です。国際研究プラットフォームとして活用できる設備を整えるほか、環境負荷を低減できるLNG(液化天然ガス)燃料が使用できる発電機を搭載し、時期によっては北極点付近への到達を目指す、最新鋭の研究プラットフォームとして設計されています。
北極海は近年、地球温暖化といった環境変化と、それに伴う北極海航路の開拓といった社会経済活動の活発化という両面で注目されています。これについて筆者(深水千翔:海事ライター)は以前、JAMSTECの担当者にハナシを聞いたことがありますが、その際に「みらいII」の役割は、北極というデータの空白域を埋めることにあると述べていました。
担当者いわく「南極周辺と比べ、北極海は圧倒的に観測データが不足している」そうです。
これまで北極海は分厚い氷に覆われており、海氷が太陽の熱を跳ね返すことで地球温暖化を防いでいました。しかし海氷が減少することで、北極海そのものが太陽の熱を吸収しやすい状態へと変貌。海水が温まりやすくなり、それがさらに海氷の減少を促すという負のサイクルが発生しています。北極海の海氷減少は、巡り巡って日本に対しては豪雪の増加などの形で影響をもたらしており、防災という観点からも実態の解明が重要となっています。
一方で太平洋や大西洋などは、船舶だけではなく自動観測フロートなど様々な手段を使って観測が行えるものの、北極海は海氷に阻まれているためアクセスが難しく、自動観測手段も満足に使用できません。
とはいえ、温暖化による北極海の海氷面積の減少は、経済的にはプラス要素となる可能性もあります。北極海を一般の商船が航行できるようになれば、アジア―ヨーロッパ間の航行日数の短縮が期待できる模様です。
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