巨大な自動車船に「翼」をつけます!? “異形すぎる”斬新コンセプト船が披露 飛行機の技術を船に

バリシップ2025にて、自動車運搬船を想定した「新たな船型」のプロトタイプモデルが披露。その形に加え、甲板上には、翼の役割を持つ“小さな帆”が複数並ぶという、かなり異形なスタイリングです。

ええ!さらに「翼端の反り返し」もつく!?

 商船三井テクノトレードの岸 邦彦さんは「ウインドチャレンジャーのような硬翼帆は、かなり高さを稼いであげないといけない。『Ishin船型』はもともと安定的に風が流れる上、デッキも高いため、ここで風を捉えられるというのが特長となっている」と話します。

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最大高さ50mにもなるウィンドチャレンジャーを搭載した貨物船「GREEN WIND」(深水千翔撮影)

 上甲板に搭載されるのは、高さを10m以下に抑えつつ、航空工学の知見を取り入れて高い推進効率を実現するという硬翼帆です。船体で加速された風を、背の低い高性能な翼帆で効率よく捉えることで、軽量・低コストかつ高効率なシステムを実現します。「実際、(帆の)高さとしては6mから7m程度になる」(岸さん)とのこと。

 搭載される翼帆は、翼を前後方向で複数に分けた分割翼を採用する点が最大の特徴となっています。分割部に隙間を設けることで、翼の高圧面から低圧面へ空気を流し、性能低下の原因となる流れの剥離を抑制。また、翼の前部と後部の角度を変化させることで翼全体に反り(キャンバー)を持たせ、風の状況に応じて最適な形状を形成し、揚力を大幅に向上させるということです。

 これに加えて、翼の先端で発生し性能を悪化させる「巻き上がり渦」を抑制するため、飛行機の翼のような翼端板(ウィングレット)の設置も考えられているといいます。

 風洞試験では、船体形状によって加速された甲板上の風が翼帆の効果を高めることがわかっています。期待されているGHGの削減効果は帆1枚で12%程度が見込まれていますが、シミュレーションでは北米航路の往復平均で16.8%の削減効果が確認されました。

 船体形状のコンセプト設計と翼帆の設計が完成したことにより、今後は新造船への搭載をメインとしつつ、既存船への後付け(レトロフィット)も視野に入れ、制御システムの詳細設計などを進めていくことが計画されています。

 実現すれば大きなインパクトとなる「Sailed Ishin船型」。船舶と航空がコラボした新しい船型は2027年度には商品化される見通しです。

【“翼”は甲板の上に】これが“異形の新型自動車船”です(写真)

Writer:

1988年生まれ。大学卒業後、防衛専門紙を経て日本海事新聞社の記者として造船所や舶用メーカー、防衛関連の取材を担当。現在はフリーランスの記者として活動中。

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