「戦車ゼロ」だった国が「最新型をしれっと導入」していた…策士オランダが選んだ防衛の最適解 政治的コスパ最強?

ロシアによるウクライナ侵攻で緊迫が続く欧州。そのなかでオランダの動きには、財政合理性と地政学的現実を見据えた、巧妙かつ柔軟な防衛戦略が浮かび上がります。

「戦車ゼロ」のメリット・デメリットは?

 注目すべきは、保有していた2A6を比較的高値で売却し、その後にドイツと共同で最新型の2A8を導入した一連の流れです。もしも古くなった2A6をそのまま保有し続けていたら、大規模な近代化改修が必要でした。2011年に2A6を手放すことで車体売却益を得たうえ、さらに近代化改修や維持運用のランニングコストを抑えることにつながったのです。

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ラトビアでNATO合同演習に参加したレオパルト2A6。ドイツ軍の鉄十字標識とオランダ陸軍のライオンエンブレムが描かれている(画像:NATO Enhanced Forward Presence in Lithuania)

 そしてタイミングを見計らって2A8という最新戦車を取得する戦略は、財政合理性の観点から見ると非常に効果的でした。

 2A8はセンサーや通信機能、モジュラー装甲といった最新技術を搭載し、防御力と継戦能力で2A6を大きく凌駕します。ドイツと同一仕様で調達することで、整備や補給の共通化によるコスト削減も可能となります。

 財政的に大きなメリットを受けることができた反面、デメリットもありました。

 10年以上にわたり自前の戦車戦力を持たなかったオランダにとって、戦車部隊を再び育成・運用するには、多大な時間を要します。戦車乗員の育成には、高度な技術教育や訓練装備、模擬戦闘環境などが必要です。加えて、部隊指揮官や整備員の体系的な訓練も不可欠であり、即応体制を再構築するには数年単位の努力が求められます。

 ドイツ依存から脱却し、主権的な戦力として自立した戦車部隊を持つには、政治的・組織的な整備も必要です。このプロセスは一朝一夕に進むものではなく、短期的には戦力の即応性が制限される局面も想定されます。

【写真】オランダを守る戦車の昔と今

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