幹部がひらめいて“現場に無茶振り!” ドイツ電撃戦の舞台裏 どう考えても無謀だった空挺作戦、強行した結果は

第二次大戦初期、ドイツ軍は小型連絡機Fi156「シュトルヒ」を使った作戦を実行します。結果は、華々しい成功とはいえず、むしろ“教訓”として語り継がれることになった作戦でした。

「どう考えても無理な作戦」開始

 このようにFi156はヘリコプターのような使い方もできましたが、あくまで小型の連絡機で、パイロットのほか搭乗できるのは2人です。

「ニヴィ作戦」に動員されたのは2個中隊約400人という兵力でした。その兵員を輸送するためにかき集められたFi156は100機で、そこに400人を分乗させて前線に投入するというのは、明らかに常軌を逸しています。ゲーリング元帥のひらめきが、そのまま現場の作戦になったとされ、実行部隊はその無茶振りに振り回される嫌な予感がするパターンです。

 作戦では、2個中隊がそれぞれ、第2装甲師団の進路にあたる北部の町ニヴィと、第1装甲師団の進路にある南部の町ヴィトリーを制圧し、5月10日中には装甲師団をヌーシャトーに到達させることが目標とされました。

 同日の早朝5時20分、二派に分かれて作戦が開始されます。しかし、Fi156は低速で離陸地点から降着点までの往復に2時間かかり、敵の対空砲火や航法ミス、天候不良によって降着はバラバラに分散してしまい、再集結して行動できたのは14時頃でした。スピードが命をモットーとする電撃戦ではありえないもたつきぶりです。

 北部のニヴィを目指した部隊は、約190人が集結できましたが、降着地点は当初の目標よりかなり離れていました。一方、南部のヴィトリーを目指した部隊は分散しすぎてしまい、指揮官のもとに集まったのはわずか9人という有様。指揮官は後に「コソコソとまるで『追いはぎ』のようだ。敵軍どころか地元警察に逮捕されるのではないか」と述懐しています。

 それでも、部隊は守備についていたベルギー軍の後方を遮断し、孤立させます。しかし、ベルギー軍は立て籠もって抵抗したため、装甲師団の先行オートバイ部隊は前進を阻まれ、抵抗を排除するのに砲兵の支援まで必要になり、結局、師団主力は5月10日中に目標のヌーシャトーに到達できませんでした。

 皮肉なことに、5月10日早朝にベルギー軍司令部はヴィトリーの守備隊に対し、敵軍と接触したら撤退するように命令を出していたのです。しかし、9人のドイツ軍部隊が通信回線を遮断したため、その命令は守備隊には届かず、結果としてベルギー軍は立て籠もって奮戦することになるのです。

 グロースドイッチュラント連隊は、電撃戦で活躍した機械化歩兵であり、装甲師団に配属されていたことからも、先行して敵軍の背後を脅かすという作戦目的は妥当だったといえます。しかし、その手段に、特殊な性能を持つFi156を投入したことには、目的と手段の逆転が起こっているようにも見えます。華々しい成功に彩られたドイツの電撃戦ですが、その裏には、こうした試行錯誤と失敗があったのです。

【写真】「電撃戦」をはじめ様々な作戦に使われたFi156

Writer:

1975(昭和50)年に創刊した、50年以上の実績を誇る老舗軍事雑誌(http://www.argo-ec.com/)。戦車雑誌として各種戦闘車両の写真・情報ストックを所有し様々な報道機関への提供も行っている。また陸にこだわらず陸海空のあらゆるミリタリー系の資料提供、監修も行っており、玩具やTVアニメ、ゲームなど幅広い分野で実績あり。

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