「国鉄形気動車ぜんぶ置き換えます」←ここは例外!の路線とは 強味を活かせる“聖域” でも今後はどうなる?
国鉄形気動車の「王国」JR九州でも世代交代が進み、「長崎・佐賀地区は全て刷新」と発表されています。ただ、その“例外”となっている路線では、国鉄形が強みを生かせる「聖域」でもありました。
「もう着くの?」と聞き返したくなる駅とは
乗り込んだキハ47には背もたれが直立したボックスシートが並び、天井には扇風機が健在で、昭和時代の雰囲気そのままです。「グオーン」という重厚なディーゼルエンジンの音を響かせながら出発し、5分後に到着した鬼塚駅(唐津市)は目の前を松浦川が雄大に流れています。

次の山本は筑肥線の伊万里方面との乗換駅で、この先で不思議な現象が見られます。約4kmの並走区間には本牟田部(ほんむたべ)駅があるものの、プラットホームがあるのは唐津線だけ。筑肥線の伊万里行きの列車は本牟田部の横を素通りして勾配を上がり、唐津線をまたいで西南方面へ向かいます。
唐津線は本牟田部を出発後、「もう着くの?」と思わず聞き返したくなる車内放送が流れます。「次はおうち」という声が響くのです。漢字表記は「相知」です。
相知の2駅先にも難読駅名の「厳木」があり、「きゅうらぎ」と読みます。駅の隣接地には、唐津線で1973年まで走っていた蒸気機関車(SL)に水を補給していたれんが造りの給水塔が残っています。2026年で建てられてから100年を迎える貴重な産業遺産です。
キハ47の方が「絶対に優れている」場面に遭遇
青々とした田園風景を抜け、のんびりした雰囲気が漂う車内が一変したのは久保田の1駅手前の小城駅(佐賀県小城市)でした。近くにある小城高校の生徒らが乗り込むと、2両編成の列車は大都市圏の満員電車も顔負けの混雑状態になりました。
混雑して実感したのが、キハ47形の輸送力の高さです。筆者が乗車していたキハ47形8000番台はトイレが付いていても1両の定員が123人あり、同じくトイレが付いたYC1系100・200番台を11人上回ります。座席定員もキハ47形のほうがYC1系よりずっと多く、利用者にとって好ましい車内レイアウトはキハ47形に軍配が上がります。
唐津を出て1時間余りで終点の佐賀に到着。キハ47形に揺られた旅路は「ロマンシング佐賀」と呼ぶのにふさわしい魅力がありました。
ただ、JR九州はYC1系の導入を中心とする「次世代車両の新製」のため2024年度に約15億円を投じたのに続き、25~30年度は計約110億円を投資する計画で、JR九州幹部は「国鉄形のキハ47形と、(両運転台の)キハ40形は順次更新される」と明言します。これは機関換装した形式であるキハ140形とキハ147形も含める認識です。
唐津線を走るキハ47形も例外ではありませんが、沿線に広がる山村風景にうまく溶け込むのがキハ47形の性(さが)だけに少しでも長い活躍を願っています。
Writer: 大塚圭一郎(共同通信社経済部次長・鉄旅オブザイヤー審査員)
1973年、東京都生まれ。97年に国立東京外国語大学フランス語学科卒、共同通信社に入社。ニューヨーク支局特派員、ワシントン支局次長を歴任し、アメリカに通算10年間住んだ。「乗りもの」ならば国内外のあらゆるものに関心を持つ。VIA鉄道カナダの愛好家団体「VIAクラブ日本支部」会員。
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