積極的に発展途上国へ警備船を輸出するぞ! 中小造船会社がスクラム構築「ベール脱いだ輸出専用巡視船艇」とは
日本中小型造船工業会が2025年7月、大型水槽での試験を披露しました。これは巡視船艇の海外展開プロジェクトを見据えたものだとか。業界団体の関係者にハナシを聞きました。
輸出用巡視船艇のライバルはフランスやオーストラリア
多機能ディスプレイや4.2m複合型ゴムボートなどを標準装備としつつ、これまで海外向けの巡視艇では考慮していなかった赤外線暗視カメラや昼夜監視可能なフルハイビジョンの海上監視システム、ハイスペックのLED探照灯などをオプションで選択できるようにします。

「この船は標準では出力1440キロワットの主機関2基を搭載するが、供与先の要望によっては高速性能を重視する可能性があることから、出力アップした1790キロワットの主機関を2基搭載することも可能としている。このように、オプション化することでカタログ化した船型でも、可能な限り客先のニーズに対応できるスペックを確保したい」(上園会長)
ちなみに、海外向け巡視船艇のライバルとしてあげられているのはフランスやオーストラリアなど。今後は日本もメンテナンスを含めた包括的なサービスを提供できるような体制を整えていくとしています。
すでにフェーズ1で行われていたデザイン性の検討などは終わっており、2025年2月からはフェーズ2で基本・詳細設計資料やカタログの作成、水槽試験などが行われています。実際の売り込みは2026年春から始まるフェーズ3で実施する予定です。ODAに加えて武装も含めて供与が行えるOSA(政府安全保障能力強化支援)の枠組みも想定されます。
岩本専務理事は「日本の船は実用的で、技術的に使いやすいという評価を得ている」と述べたうえで、「しかしライバルはデザイン性に特化している部分がある。私たちも見た目で負けていられないので、デザイン性を工夫し、許される範囲でかっこよくしている」と話していました。
日本は近年、艦艇の輸出を試みていますが、新造艦の成約まで結びつかない状況が続いています。そのようななか、前述したようなカタログとして相手国にすぐ提示できる標準モデルの開発を行うのも、ひとつの手と言えるのかもしれません。
Writer: 深水千翔(海事ライター)
1988年生まれ。大学卒業後、防衛専門紙を経て日本海事新聞社の記者として造船所や舶用メーカー、防衛関連の取材を担当。現在はフリーランスの記者として活動中。
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