「史上最悪のスカイライン」の呼び名は本当か? 多難だった「4代目GT-R」の評判をガタ落ちさせた“事件”の真相

1995年に発売された日産のBCNR33型「スカイラインGT-R」は、大きく重くなったボディで、偉大な先代「R32型」を超えなければならず、結果「史上最悪のスカイライン」とまで呼ばれました。ただ、その評価は正しいのでしょうか。

著名な評論家が明かしたBCNR33の開発秘話

 当時、自動車専門誌などで舌鋒鋭く、大きく重くなったBCNR33を批判していたのが自動車評論家の福野礼一郎氏でした。

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モデルライフ途中で追加されたBCNR33改型「スカイラインGT-Rオーテックバージョン 40th ANNIVERSARY」。4ドアの「スカイラインGT-R」の登場は、1969年に登場したPGC10以来のことだった

 彼いわく「スカイラインGT-R」が新型になって性能向上を果たしたのはメカニズム面であって、スポーツカーとしてのパッケージングはむしろ後退しているとのこと。BCNR33のメカニズムを先代のBNR32に搭載すれば、走行性能は向上し、さらに素晴らしいスポーツカーになっただろうと喝破していました。

 また、日産デザイン関係者からの伝聞として、「スカイライン」の開発初期では2ドアクーペと4ドアセダンでホイールベースを変えようとしていたとか。しかし、開発途中で上層部の横槍が入り、コストダウンのために全車「ローレル」と同じ長いホイールベースとされたことを明かしています。

 これについては後年、筆者は別の取材でBCNR33の開発主査を務めた渡邉衡三氏に直接尋ねたことがあります。その際、彼は笑顔で福野氏の説を否定していたものの、目だけはまったく笑っていなかったことを今も印象深く覚えています。

 これら出来事に加えて、BCNR33型は先代のBNR32型とは異なり、モータースポーツで活躍する機会がほとんどなかったことも影響し、いつしか「スカイライン」ファンから失敗作の烙印を押されるようになってしまったといえます。しかし、本当に失敗作でしょうか。

 筆者はのちに、某チューニングショップが手塩にかけて仕上げたBCNR33型をじっくりと試乗する機会に恵まれ、わかったことがあります。確かにR33型GT-Rは、峠やミニサーキットでは大きく重い車体を振り回すことができず、その実力を真に発揮することはできません。

 しかし、富士スピードウェイのようなハイスピードコースや最高速アタックでは、逆に大柄で重量のあるボディが武器となり、BNR32以上の性能を発揮します。すなわち、戦うステージが違うだけで、BCNR33はやはり“GT-R”にふさわしいハイパフォーマンスカーだったのです。

 近年、BCNR33型は再評価が進み、BNR32型や後継のBNR34型とともに、中古車として高値で取り引きされるようになっています。BCNR33型の持つ真価は、生産終了から長い時を経て、ようやくファンの間にも理解されつつあると言えるでしょう。

【ファン総スカン!?】これが不評だった「プロトタイプ版」GT-Rです(写真)

Writer:

「自動車やクルマを中心にした乗り物系ライター。愛車は1967年型アルファロメオ1300GTジュニア、2010年型フィアット500PINK!、モト・グッツィV11スポーツ、ヤマハ・グランドマジェスティ250、スズキGN125H、ホンダ・スーパーカブ110「天気の子」。著書は「萌えだらけの車選び」「最強! 連合艦隊オールスターズ」「『世界の銃』完全読本」ほか」に

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