“激ヤバ納期”必至!? 初の「護衛艦輸出」への高い壁 「日本ファースト」は通用しない!

オーストラリアの新型フリゲートを提案していたドイツを退け、三菱重工業が優先価格交渉者になりました。その勝因を分析すると、このことが今後の日本へ重くのしかかって来るとも考えられます。

「日本ファースト」では決してなし得ない

 11隻の建造が予定されているアンザック級後継艦の1~3番艦は、日本国内で建造されます。このため日本政府は、オーストラリアが望むのであれば、2025年度中の起工が予定されている令和6年度護衛艦を、アンザック級後継艦に仕立て直して、海上自衛隊より先にオーストラリア海軍に引き渡すことも検討しています。

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置き換え対象となるオーストラリアのアンザック級フリゲート(画像:オーストラリア国防総省)

 オーストラリア海軍への優先引き渡しは、当然、海上自衛隊や日本の防衛計画にも影響を及ぼします。それでもオーストラリア海軍に優先引き渡しを行う価値があることを、日本政府は国民に丁寧に説明することが求められます。

 また、令和6年度護衛艦には対艦ミサイルとして、国産の17式艦対艦誘導弾の搭載が予定されていますが、オーストラリアは共同開発となるアンザック級後継艦におそらくNSM(Naval Strike Missile)の搭載を求めてくるのではないかと思います。これはアメリカ海兵隊が運用しており、アメリカ海軍も導入を予定しているミサイルです。

 その他の兵装に関しても、有事の際にアメリカなどからの融通を受けやすい、アメリカ製などの外国製兵装を求めてくる可能性もあると筆者は思います。

 この場合、日本政府はアメリカなどと交渉を行う必要が生じますし、海上自衛隊の護衛艦に搭載されていない兵装の統合は、1~3番艦の建造を行う国内造船企業にとって、少なからぬ負担になるとも考えられます。日本には輸出用水上戦闘艦の建造をした経験がありませんので、アメリカなどとの交渉も、自衛隊で使用されていない外国製兵器の統合も、手探り状態で行うことになるでしょう。

 このようにオーストラリアとの共同開発は「茨の道」になるとは思いますが、「茨の道」の先に何があるのかは、経験者にしかわかりません。この先も日本が防衛装備品の輸出をしたいのであれば、「茨の道」に飛び込んでいく必要はあると筆者は思います。

 純粋な安全保障の面だけに目を向けても、同志国であり、もはや準同盟国でもあるオーストラリアの海軍力強化は、日本の安全保障をより強固にする可能性を秘めています。

 オーストラリアとの水上戦闘艦の共同開発は、産業、安全保障の両面で日本のメリットになると思いますし、日本政府にはそのメリットを国民に説明していく必要があるとも思います。

【あ、デカい!】オーストラリア向け新型艦ともがみ型の“大きさ比べてみた”(画像)

Writer:

軍事ジャーナリスト。海外の防衛装備展示会やメーカーなどへの取材に基づいた記事を、軍事専門誌のほか一般誌でも執筆。著書は「最先端未来兵器完全ファイル」、「軍用ドローン年鑑」、「全161か国 これが世界の陸軍力だ!」など。

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コメント

1件のコメント

  1. 海自向け新型FFMをオーストラリア用に回すと

    今度はあぶくま型の退役が遅れてフィリピンへの引き渡しが後回しになりそうですね。

    両方の輸出を優先すれば海自の戦力が一時的に低下するし悩ましいところですね。