日本+5か国14隻の「大空母艦隊」奇跡の集結!? 令和の「見せる抑止力」もともと提唱していた国とは?
海上自衛隊が英米豪など5か国海軍と大規模共同訓練を実施し、計5隻の空母が参加しました。ここで思い出されるのが、かつてイギリスで提唱された「多国籍空母打撃群」構想です。
専門家が提言する多国籍空母打撃群構想
チャイルズ氏の構想はアメリカ、イギリス、フランスの3か国が保有する空母を中核に、日本、オーストラリア、韓国などが参加して空母打撃群を編成し、空母の不在によるインド太平洋地域での自由主義諸国のプレゼンス低下を防ぐというものです。チャイルズ氏は明言していませんが、この構想が中国の海洋支配をけん制することを目的としているのは明白でしょう。
同時にチャイルズ氏は日本、オーストラリア、韓国の提供できる能力は限定的であると述べていますが、仮にこの構想が実現した場合、イギリスやフランスに比べてインド太平洋への展開がしやすい日本から、F-35Bを搭載したいずも型ヘリコプター搭載護衛艦が参加することは十分考えられます。
中国を「退散」させた空母の神通力
中国は1995年から96年にかけて、台湾の独立を主張していた当時の李登輝政権に圧力をかける目的で、台湾領海内への弾道ミサイル発射試験や、台湾へ侵攻する場合に主力となる福建省の部隊の動員といった軍事行動を行いました。

中国のこの試みに対して、アメリカは原子力空母「ニミッツ」と、当時横須賀に配備されていた通常動力空母「インディペンデンス」を基幹とする2個空母打撃群(当時の呼称は空母戦闘群)に台湾海峡を通過させて圧力をかけ、中国の軍事行動を断念させています。
それから約30年が経過した現在、中国は空母を攻撃できる弾道ミサイルなども保有していますので、空母打撃群の「神通力」は当時に比べれば低下していることは否めませんが、それでも大きな圧力をかけられる存在だと筆者は考えます。
前に述べたチャイルズ氏の提言には、イギリスとフランス以外のヨーロッパ諸国は含まれていませんでしたが、今回の共同訓練に参加したスペインやノルウェーなどの自由と民主主義を国是とするヨーロッパ諸国が日米豪、韓国と一致団結して、海洋の自由を守り、軍事力による現状変更は認めないという姿勢を示すことができれば、「多国籍空母打撃群」の持つプレゼンスは、より大きなものにできるとも思います。
いずも型の改修とF-35Bの艦上運用は、航空自衛隊の戦闘機を運用する基地のない太平洋岸の防空能力を強化することを目的に掲げています。また、現在のヨーロッパはロシアの軍事的脅威が大きくなっていますので、ヨーロッパ諸国からインド太平洋への水上戦闘艦の派遣も、チャイルズ氏が提言した2021年時に比べて難しくなっているのも確かです。
それでも、自由主義陣営が団結して軍事力による現状の変更は認めないという姿勢を具体的な形で示すことができれば、それは中国だけでなくロシアへのけん制効果も期待できますので、多国籍空母打撃群を編成するという考え方は、一考に値すると筆者は思います。
Writer: 竹内 修(軍事ジャーナリスト)
軍事ジャーナリスト。海外の防衛装備展示会やメーカーなどへの取材に基づいた記事を、軍事専門誌のほか一般誌でも執筆。著書は「最先端未来兵器完全ファイル」、「軍用ドローン年鑑」、「全161か国 これが世界の陸軍力だ!」など。
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