日本唯一「トレーラーバス」実は“自家用車”になっていた!? 乗りもの界の絶滅危惧種は「経験したことない乗り心地」 今どうなってる?
東京都日の出町の有志が保有する、日本唯一のトレーラーバス「青春号」。動力車が客車部分を牽引する特殊なバスです。2023年に路線バスとしての定期運行を終了していますが、その後どうなったのでしょうか。
通常のバスとも鉄道とも違う、唯一無二の乗り心地
現在は事業用バスではなく、白ナンバーの「自家用車扱い」なので、営業運転には使えないそうです。なお、「青春号を活用した町おこし隊」では、同車向けに免許を取得し、車両の整備を自力で行う体制を整え「車検と保険代程度で維持できている」とのことです。
ただし「特注車両なので、部品一つ交換するのも大きな出費となり、イベント出展や物販だけでは、今後大規模改修が必要になった場合に費用が賄えない」とのことで、運用方法については課題がありそうです。
「青春号を活用した町おこし隊」にこれまでの活動を聞くと、「私たちは日の出町商工会青年部のOBとして、現役時代から青春号にかかわってきました。営業運行終了後、日の出町にプレゼンし、地元に止めることができたのです。現在では近隣自治体のお祭りや、近隣企業のイベントに月1~2回程度出展しており、とてもいい反応を頂いています。つるつる温泉ではキーホルダー、バス缶、ミニタオル、サンリオコラボグッズを販売しています」という話でした。
「町おこし隊」の厚意で、「青春号」に乗車できました。蒸気機関車風の牽引車と、鉄道車両のような客車部分は非常にインパクトがあり、「イベントに行くと、どこでも注目されます」とのこと。タイヤのホイールが蒸気機関車の動輪のようになっているなど、とても凝ったデザインが目を惹きます。
客車部分は連結部の大きな窓や座席部分の天窓によって、視界が開けています。内装はレトロ感があり、座席もなかなか立派なもので、製造費は8000万円とのことです。走行するとカーブの度にゆったりと車体が振られる感覚は、今までのバスとも鉄道車両とも違う、全く経験したことがない乗り心地でした。
動力車部分は、横揺れなどが全くなく、静かな乗り心地。客車部分とは天地の違いでした。運転席のモニターで客車内が見られるのは「青春号」ならではの設備と言えるでしょう。
唯一無二と言える「青春号」ですが、今後はどのような活躍をするのでしょうか。
「西多摩地区が団結して、観光やインバウンドに『青春号』を活用したいです。観光や産業の拠点『肝要の里』などの地域施設と絡めたイベントも考えています」とのこと。国内唯一のトレーラーバス。末永い活躍を願っています。
Writer: 安藤昌季(乗りものライター)
ゲーム雑誌でゲームデザインをした経験を活かして、鉄道会社のキャラクター企画に携わるうちに、乗りものや歴史、ミリタリーの記事も書くようになった乗りものライター。著書『日本全国2万3997.8キロイラストルポ乗り歩き』など、イラスト多めで、一般人にもわかりやすい乗りもの本が持ち味。
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