ついに退役迫る! かつて“景品にされかけた”有名すぎる戦闘機の40年 お茶の間を騒がせた事件とは
アメリカ海兵隊が運用するAV-8B「ハリアーII」の退役が刻一刻と近づいています。数々の実戦に参加し、一般にも話題を振りまいた40年を見てみます。
コーラの景品にされかけたハリアーII
この人気に目を付けたのが、ペプシコーラを製造販売しているペプシコ社です。

ペプシコ社は1995年から96年にかけてアメリカで展開された販促キャンペーン「ペプシスタッフ」で、ペプシコーラの購入でポイントを貯めれば、ハリアーIIと交換できるとテレビCMで喧伝しました。
キャンペーンは500ミリリットル入りのペプシコーラ1箱分(24本)を購入すると、10ポイントが購入者に与えられる仕組みで、ハリアーIIとの交換には「700万ポイント」を必要としていました。
700万ポイントの獲得は現実的な話ではなく、当然ペプシコもジョークのつもりだったのですが、15ポイントを貯めた購入者は、商品交換に必要な不足分のポイントを、1ポイント10セントに換算して応募できることとしたことから、大騒動に発展します。
大学生が挑んだ70万ドルの賭け
当時大学で経営学を専攻していたジョン・レナード氏が、ポイント不足分を金銭で補えるという仕組みに目を付け、ペプシコーラ36本分のポイントに添えて、不足している69万9998.5ポイントに相当する69万9998.5ドルに手数料10ドルを加算した小切手を添えて応募したのです。
レナード氏の応募を受け付けたペプシコ社は、ハリアーIIとの交換は販促キャンペーンのユーモアであるとして、レナード氏に小切手を返送しました。しかしレナード氏は納得せず、その後の話し合いでもレナード氏がペプシコ社の主張に納得することはありませんでした。
このためペプシコ社は、レナード氏にハリアーIIを提供する義務がないことを確認するため、連邦地方裁判所に提訴。一方のレナード氏も、ペプシコ社の販促キャンペーンが虚偽広告、不公正取引に当たるとして、連邦地方裁判所に提訴しています。
ペプシコ社とレナード氏の双方から提訴を受けた連邦地方裁判所は、ポイント交換キャンペーンのカタログにはハリアーIIが記載されておらず、ペプシコ社のキャンペーンは「明白な冗談である」として、レナード氏の訴えを棄却し、ペプシコ社がレナード氏にハリアーIIを提供する義務がないことを確認しています。
同氏は連邦高等裁判所に控訴しましたが、連邦高裁はこの控訴を棄却。判決は確定しました。この裁判は「レナード対ペプシコ事件」として、法曹関係者以外にも広く知られており、Wikipediaにも独立した項目が設けられています。またアメリカ国防総省はわざわざ、アメリカ軍で使用されている軍用機が、非武装化なしに民間に売却されることはないという声明まで発表しています。
ハリアーIIはその実績で航空史に名を刻む名機となったことは間違いありませんが、妙な形でも歴史に名を残す航空機となったのも、その人気の高さによるものなのかもしれません。
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