ジムニーと「ハスラー」ってどっちがいいんですか? 本格派ならジムニーですよね? 「ハスラーのスゴさ」とは?
昨今流行している軽クロスオーバーの元祖といえるスズキ「ハスラー」ですが、同社の「ジムニー」のほうがより本格的で“男らしい”モデルであるとも評されています。しかし、その評価は本当に適切なのでしょうか。
“真の男らしさ”は、見た目だけじゃわからない
では、クルマとして肝心な走行性能ではどうでしょうか。足回りについてですが、ジムニーの最低地上高は205mmで、ホイールサイズも16インチと比較的大型です。また、サスペンションもハスラーよりショックの吸収に優れていると言われ、当然ながら本格的な悪路での乗り心地は、ジムニーに軍配が上がります。

しかし、ハスラーの走破性が劣っているというわけでもありません。ハスラーの最低地上高は180mm、ホイールは15インチと、数値ではジムニーに及びませんが、軽ハイトワゴンとしてのユーティリティも考えれば、バランスのとれたスペックです。悪路でもジムニーよりはショックが大きいものの、乗り心地は優秀。また4WD仕様では、通常時は前輪をメインに駆動しつつ、滑りやすい路面では後輪にも駆動力を最適に分配し、悪路性能を高めています。
さらに、パワーユニットは現行ジムニー・ハスラーともに同じR06A型3気筒ターボエンジン(ハスラーには自然吸気エンジンも設定あり)ですが、ハスラーには減速時の回生エネルギーで発電し、加速をモーターでアシストするマイルドハイブリッドシステムが搭載されています。安全装備に関しても、ハスラーには全方位モニター用カメラやアダプティブクルーズコントロールなど、ジムニーにはない装備が採用されているのが魅力的です。
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ジムニーは長い歴史を持つ個性派モデルであり、走破性能をとにかく磨き上げることでブランドを築いてきました。実際に所有するうえでも、ジムニーには高い特別感があり、リセールバリューの高さなどでもハスラーをはるかに凌駕しています。
一方、ハスラーにはジムニーほどの唯一無二の長所はありませんが、パッケージングはさまざまな用途に対応できるよう考え抜かれており、走行性能も現代技術をうまく活用しながらバランスされています。このような懐の深さを持つハスラーは、実はジムニーと比肩しうる完成度の高い1台なのではないでしょうか。
筆者個人としては、2車のうち「乗れば乗るほど凄さがわかる」と思うのはハスラーのほうです。高度にバランスされた実用性と悪路性能を、優しそうなルックスに包んだハスラーは、何とも頼もしく、男らしい1台です。筆者はこの全方位的な魅力を考えると、“男らしい”頼もしさとは力強さだけでなく、“包容力の高さ”でもあるのだと感じるのです。
Writer: 松田義人(ライター・編集者)
1971年、東京都生まれ。編集プロダクション・deco代表。バイク、クルマ、ガジェット、保護犬猫、グルメなど幅広いジャンルで複数のWEBメディアに寄稿中。また、台湾に関する著書、連載複数あり。好きな乗りものはスタイリッシュ系よりも、どこかちょっと足りないような、おもちゃのようなチープ感のあるもの。
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