函館本線「海線」は誰のもの? 物流の大幹線が「単なるローカル線扱い」を脱しない“矛盾”

北海道新幹線の札幌延伸に伴い、函館本線「海線」を貨物鉄道として存続させる方針が確認されました。しかし、国の戦略的な物流動脈でありながら、並行在来線として「地域の鉄道」扱いを脱しない構造的な矛盾が浮き彫りになっています。

肝心な事は検討していない?

 28年前に鉄道貨物の存続が決まっているなら、あとは粛々と進めるだけと思いがちですが、課題が5つ挙げられており、これをどうするのかは、まだ検討されていません。

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海線は貨物列車の大幹線(画像:PIXTA)

 まず、誰がJR北海道から貨物鉄道を引き継ぐのか。JR貨物、道南いさりび鉄道、あるいは新たな会社を設立するのかは、これから検討です。

 このほか、年間数十億円と見込まれる維持費用の負担は誰が負担するのか。要員はどう確保するのか。青函トンネルは貨物列車と新幹線が共用するので、新幹線は160km/hに制限されていますがこれをどうするのか。JR貨物のサービスレベルは今のままで良いのか――などが未検討です。

 食糧安全保障・物価の安定(輸送費用や冗長性)・経済の安定・環境問題という国家的問題・国の全体最適を考えるとなると、北海道だけの問題ではなくなります。中間取りまとめでも「国も含めた役割分担のあり方を考えるべきである」としています。

「貨物は存続」その恩恵を受けるのは?

 北海道新幹線の新函館北斗-札幌間には、国鉄民営化から派生した整備新幹線・並行在来線のスキームが適用されます。日本の鉄道は、旅客鉄道の採算性が高く貨物鉄道が低いとされてきたため、スキームの前提は旅客収益を鉄路存続の主軸にしており、並行在来線は地域旅客輸送の主な受益者である地方自治体が引き受けるルールになっています。

 ところが今回の海線では、地域旅客輸送の存続は未確定で仮に廃止となれば、貨物専用鉄道になるかもしれないという想定外の状況です。鉄道貨物の受益者は沿線地区ではなく生産地の道央・道東と、消費地の首都圏・関西圏などになります。並行在来線だから沿線自治体に負担を求めるというのは無理があるでしょう。

 一方、北海道のインフラ整備には巨大な予算が存在します。北海道開発局関係の2025年度予算は、総額で6794億円に達し、主な目的は「生産空間の維持・発展による食料安全保障及び観光立国の一層の強化」や「物流の強化」であり、海線が担う機能と一致しています。この予算は、道路、治水、港湾、空港などに配分されています。国家的戦略目標に資するインフラ投資として、国費が直接投じられているのです。

【え…!】これが「函館本線で運ばれる貨物量」です(地図/写真)

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