米軍が初公開「次世代の超長~く飛ぶ核ミサイル」搭載すれば旧式機でも攻撃力大幅アップ! 中国&ロシアを牽制する意図も

米空軍が長らく秘匿されてきた新型の核搭載型の巡航ミサイルを公開しました。これが実用化されると非ステルスのB-52爆撃機でも最新のB-21「レイダー」爆撃機に比肩する核投射能力を付与することができるとか。どのような性能なのでしょうか。

中国とロシアに対するけん制の意味も

 搭載予定の弾頭は、現在開発中のW80-4核弾頭です。その威力は約150キロトンに達しますが、これは広島型原爆の約10倍に相当するとか。そのことを考えると決して低威力とは言えませんが、それでもかつて軒並み「メガトン級」の破壊力を誇った冷戦期の戦略核兵器と比べると、それらとは異なり小型化と精密誘導を前提とすることで、柔軟な運用と抑止力の確実性を両立させている模様です。

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AGM-181 LRSO戦略核兵器のCGレンダリング画像。防空網突破のためにステルス性を意識していると考えられ、射程距離は2500kmにも及ぶ大型の巡航ミサイルである。(画像:アメリカ空軍))。

 LRSOは、まずB-52J爆撃機に搭載される予定です。B-52Jは、1950年代に初飛行したB-52「ストラトフォートレス」シリーズの最新モデルです。最新の電子機器や新型エンジンを備え、さらに新たなAGM-181 LRSOの運用能力を獲得することで、21世紀半ばに至ってもなお核抑止の主力にとどまり続けることになります。

 さらに、KRSOは新型のステルス爆撃機B-21「レイダー」への搭載も考えられています。B-21は将来的にB-2やB-1Bを代替し、より深く敵中枢に接近して爆弾などを投射できる戦略爆撃機として導入が計画されていますが、射程の長いLRSOは敵の防空の外側から発射可能です。そのため、これを使えば非ステルス機のB-52Jでも、その抑止力はB-21に劣らないと言えそうです。

 アメリカ国防総省の計画によれば、LRSOは総計1020基の調達が予定されており、1基あたりのコストは約1400万ドル、ミサイルを30年間の寿命にわたって維持するコストなども勘案すると、その総額は日本円換算で約3兆円にも達するとのこと。冷戦後における核兵器のアップデート計画としては最大級の事業になります。

 なお、アメリカがこの規模の投資を決断した背景には、旧式装備の更新だけが理由ではなく、ロシアおよび中国との戦略的な競争の激化があります。

 ウクライナ戦争以降、ロシアが核抑止の閾値(しきいち)を引き下げるかのような言動を繰り返し、中国もまた急速に核戦力を増強しつつあります。こうした現実を突きつけられたことで、アメリカも「冷戦後」の延長線上ではなく、新たな大国間競争時代における核抑止戦略を再構築する必要性を痛感させたと言えるのではないでしょうか。

【写真】開発中の最新ステルス爆撃機B-21「レイダー」の飛行シーン

Writer:

1981年生まれ。航空軍事記者、写真家。航空専門誌などにて活躍中であると同時に世界の航空事情を取材し、自身のウェブサイト「MASDF」(http://www.masdf.com/)でその成果を発表している。著書に『JASDF F-2』など10冊以上。

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