「世界最大の航空機」の歴史、変わるかも!? 全長100m超の“怪鳥軍用輸送機”、実現の可能性は?
現在、アメリカのスタートアップ企業が航空機史上でも最長の機体の軍用輸送型を開発しており、実用化すれば航空機史上でも最長の機体となります。このポテンシャルはどのようなものなのでしょうか。
万能ではない? 見た目と同じくかなりのイロモノ輸送機
ラディア社ではこの「ウインドランナー」の初飛行を2030年までに目指しているそうです。もし、実際に実用化され軍に配備された場合、アメリカ空軍にとっては数十年ぶりの新型軍用輸送機となります。
しかし、この機体がすべての軍用輸送機に取って代わることはないでしょう。というのも、「ウインドランナー」はその外見や大きさだけでなく、航空機としての性能も極端な機体なのです。
確かに機体サイズは史上最大ですが、貨物の最大積載重量は72.6トンとC-5輸送機の6割程度しかありません。また、航続距離は2000キロメートルと、C-5輸送機やC-17輸送機の半分以下です。つまり、「ウインドランナー」は、機内空間は広くても、重量物を遠くに運ぶことには不向きな機体なのです。
これは「ウインドランナー」の設計がタービン・ブレードという特殊な貨物を運ぶことに特化したためであり、一般的な航空貨物輸送に不向きなためです。今回、「ウインドランナー・フォー・ディフェンス」という計画を発表したのも、軍事作戦が本機のトガった設計にマッチングできる数少ない特殊な用途だったといえるでしょう。
近年、アメリカ空軍は出撃基地を固定しないACE(機動的戦闘運用)というコンセプトを推進しています。中国やロシアが巡航ミサイルや弾道ミサイルを増強したことによって、これまでの空軍基地が直接攻撃を受ける可能性が高まっており、機体や支援機材を民間空港などに分散展開させて、その攻撃に対応しようとしているのです。このACEにおいて「ウインドランナー」が活躍できる局面は多いようで、ラディア社でも既存の輸送機を補完するという立ち位置で本機を提案しているようです。
Writer: 布留川 司(ルポライター・カメラマン)
雑誌編集者を経て現在はフリーのライター・カメラマンとして活躍。最近のおもな活動は国内外の軍事関係で、海外軍事系イベントや国内の自衛隊を精力的に取材。雑誌への記事寄稿やDVDでドキュメンタリー映像作品を発表している。 公式:https://twitter.com/wolfwork_info
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