「新幹線の父」をNHK朝ドラに 実現なるか? 地元で署名10万筆超 “新幹線計画”の追い風にも?

「新幹線の父」と呼ばれる故・十河信二元国鉄総裁の夫妻を主人公にしたNHKの連続テレビ小説の実現を目指し、出身地の愛媛県などが署名活動などを繰り広げています。どのような人物で、そしてどのような効果があるのでしょうか。

「走ってくれさえすれば、それでいいんだよ」

 国鉄総裁に就いた十河氏は、経済成長のためには三大都市圏が連なる東京―大阪間の輸送力強化が不可欠と考えて「東海道線の補強のため、広軌新幹線を建設する」と訴えました。広軌とは線路幅1435mmの標準軌のことで、狭軌(1067mm)の東海道本線より線路幅が広い”夢の超特急”を建設して、東京と大阪を4時間で結ぶ構想でした。

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四国鉄道文化館南館の前に展示されたフリーゲージトレイン(軌間可変電車)の2代目試験車両(大塚圭一郎撮影)

 これに対し、世論は「大風呂敷を広げている」と冷ややかでした。自動車の普及と旅客機での移動が広がるのに伴い、「鉄道は斜陽化する」との見方が一般的になっていたからです。記念館では、当時のことを「国鉄内部でも”じいさんの夢物語”として軽く扱われます」と解説しています。

 1959年には東海道新幹線の着工に導き、世界銀行からの融資を勝ち取って道筋を付けた十河氏ですが、64年10月1日の出発式にその姿はありませんでした。東海道新幹線の建設費が計画より大幅に膨れあがり、国鉄財政を悪化させたとの批判を受けて63年に総裁を任期満了で退任に追い込まれたからです。

 有言実行で東京―新大阪を最速約4時間で結ぶ“夢の超特急”を誕生させて「鉄道は斜陽化する」との見方を跳ね返し、60年を過ぎた今も最速2時間21分でつなぐ日本経済を支える大動脈を築いた功労者であるにもかかわらず、十河氏は自宅のテレビで出発式の様子を見守りました。

 十河氏の元秘書が出発式に招待されなかった国鉄側の非礼をわびたのに対し、「なに、無事走ってくれさえすれば、それでいいんだよ」と語ったという逸話は度量の大きさを示しています。

“キャラ立ち”しそうな、これだけの理由

「短気で雷おやじだった」という一方で、自宅への来客が途切れなかったと言われるほど人望があり、利権とは無縁のクリーンな経営者だったとされる十河氏。そんな資質は家族向けテレビドラマの主人公にふさわしく、キャラ立ちするのは間違いありません。

 加えて「なにほどかの仕事ができたとしたら、それはまったく妻のおかげ」と打ち明けたという愛妻家の顔もお茶の間の支持を集めそうです。

 学生結婚した北海道函館市出身のキクさんはおおらかな人柄で夫を支え、6人の子どもを育てました。息子4人のうち2人が鉄道の仕事に携わり、第2代国鉄総裁の故・加賀山之雄氏らを輩出してきた加賀山家に長女が、近畿日本鉄道初代社長の故・種田虎雄氏の一族に次女がそれぞれ嫁いでおり、”鉄道一家”が形成されたというのも面白いエピソードです。

【朝ドラになる顔!?】これが「新幹線の父」です(写真)

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