もともと「さんふらわあ」でした――日韓航路で23年 まもなく“別の国際航路”へ 波乱万丈すぎる功労船
23年にわたり“日韓の懸け橋”として活躍した元「さんふらわあ」のフェリーが、新造船の就航に伴い日韓航路を引退し、別の国際航路へ“転身”します。就航のときを待つフェリーの半生を振り返ります。
震災支援、空港代替輸送…歴史刻んだ23年
パンスターグループは「パンスタードリーム」の導入によって定時運航、専用埠頭の使用といった旅客船のメリットを得ることができました。さらに日本の税関通関免許を取得し、当日通関体制などを整えることで、航空便よりも速い高速輸送サービスとして成長の基盤を築いています。

旅客部門では、単に乗客を目的地まで輸送するだけでなく、船旅自体を目的にする「クルーズ」という概念を導入。これは新造船の「パンスターミラクル」にも引き継がれています。
運航会社であるサンスターラインの舎野祝光社長は、パンスタードリームの23年間を振り返り、特に東日本大震災での支援物資輸送と、関西国際空港が閉鎖した時の代替輸送を挙げています。
「2011年3月に発生した東日本大震災の時、釜山南部の小学校6年生の児童が文房具を集めて、小さな段ボール2つを日本に送ろうとしました。しかし、物が小さく、震災直後だったため、どの団体もOKしませんでした。そこで釜山から大阪に走っているフェリーで運ぼうということになり、『パンスタードリーム』で大阪に持ってきて、被災地の小学校へ文具を届けました」(舎野社長)
た、2018年9月には台風21号の影響で関西国際空港の多くの施設が浸水し閉鎖されました。この時は連絡橋へタンカー『宝運丸』が衝突する事故も発生し、帰国困難者があふれる中、『パンスタードリーム』が多くの旅行者を大阪から釜山へ運んでいます。
新天地・台湾へ
パンスタードリームの就航以降2024年までの累計旅客数は155万人余り。コロナ禍で2020―2023年に旅客輸送が中断された点を考慮すると、年間平均旅客数は約10万2000人となっています。2024年の旅客数は約5万4000人で、コロナ以前の水準を回復しました。
貨物量はパンスタードリーム就航初年の2002年は7135TEUでしたが、現在は4倍の水準に増加しています。
2025年4月にパンスターミラクルが就航した後も、同船の船体トラブルに伴うピンチヒッターとして日韓航路に入っていたパンスタードリームですが、その役目を終えて次に向かうのは日台航路です。「商船やいま」が2025年秋の開設を目指す石垣(沖縄)―基隆(台湾)航路の「YAIMAMARU(やいま丸)」として、デビューの時を待っています。
Writer: 深水千翔(海事ライター)
1988年生まれ。大学卒業後、防衛専門紙を経て日本海事新聞社の記者として造船所や舶用メーカー、防衛関連の取材を担当。現在はフリーランスの記者として活動中。
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