潜水艦はなぜ黒い?GPSなしでも水中進む「海の忍者」―究極の隠密システムの秘密とは
潜水艦が海に潜む姿は「忍者」のようですが、その秘密は多岐にわたります。黒い船体から艦内の生活まで、すべてが「見つからずに任務を遂行する」という、ただ1つの目的のために構築されています。そんな潜水艦の秘密に迫ります。
GPSも空気も自給自足 「忍者」を支える技術と文化
海中は電波が届かないため、潜水艦は一度潜るとGPSなど使えず、外部との無線通信なども制約を受けます。この究極の隠密行動を支えるのが、自給自足の技術と、それを運用する乗組員の生活文化です。
                
                  
                航法には現在位置を推定する慣性航法装置(INS)を用います。ただ、INSは時間とともに誤差(ドリフト)が蓄積するため、定期的に浅い深度でマストを展開し、受信専用のGPSアンテナなどで位置を更新します。
探知リスクが生じるのは、電波受信そのものではなく、浅深度への浮上やマスト展開に伴う視認・レーダー反射の増大という行為自体です。ゆえに、INSの高精度化は潜水艦の隠密性と直結します。
隠密性を左右するもう1つの鍵が動力源です。燃料補給や吸排気などを必要としない原子力潜水艦は、長期間潜航できるため遠方・長期の戦略任務に適する一方、エンジンを停止して電池で潜航できる通常動力型は極めて静粛で沿岸防衛に向いています。
近年はAIP(非大気依存推進)や大容量リチウムイオン電池の導入で、通常動力型でも無補給での潜航持続時間が大きく伸びています。「そうげい」も通常動力型の最新鋭で、日本の防衛に適した能力を備えます。
乗組員の生命線である空気も艦内で賄います。造水装置で真水を作り、その水を電気分解して酸素を生成。非常時には薬剤を燃焼させて酸素を発生させる酸素キャンドルも用意します。
過酷な環境を支える文化も重要で、海自の「金曜カレー」は長期任務で曜日感覚を保つ役割を担い、乗組員の心の支えとなっています。
黒い船体、GPSに頼らない航法、自給自足の生命維持――そのすべては「海の忍者」として深海に溶け込み、任務を完遂するための必然から生まれたです。
潜水艦とは、最先端技術と人の工夫が「見つからない」という1つの目的のために極限まで統合された、究極のシステムと言えるでしょう。





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