新造はもうムリ!? 海のF1「ジェットフォイル」驚異の性能と超高額すぎる現実

「海の新幹線」とも呼ばれる高速船ジェットフォイル。その驚異的な性能は多くの離島航路を支えてきましたが、建造コストの高騰という課題を抱えています。波の上を「飛ぶ」船の仕組みと、その未来はいったいどうなっているのでしょうか。

「翼」で浮いて「水噴射」で進む

 佐渡島(新潟県)や伊豆諸島(東京都)、五島列島(長崎県)など、日本の離島と本土を結ぶ航路で活躍する高速船「ジェットフォイル」。ガスタービンエンジンで駆動するウォータージェット推進を備え、その速さから「海の新幹線」や「海のF1」とも呼ばれています。

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佐渡汽船の「つばさ」(柘植優介撮影)。

 最大の特徴は、船体の下にある水中翼です。停止時は通常の船と同様に船体が水に浸かっていますが、速度が上がると水中翼に揚力が生じ、船体が海面から完全に浮き上がります。

 この「翼走(よくそう)」状態では水の抵抗をほとんど受けずに航走できるため、状況いかんでは80km/hを超える高速運航が可能になります。

 また、波の影響を受けにくく揺れが少ないため、船酔いしにくいのも大きなメリットです。波高3.5m程度までなら、ほとんど揺れを感じることなく快適な船旅を楽しめます。

 安全性も特筆すべき点です。仮にクジラなどの海洋生物と接触しても、水中翼や各種安全機構が衝撃を吸収する設計が採られています。

 さらに緊急時にはウォータージェットの逆噴射により、80km/hの高速状態からでも約90mという、自動車並みの短距離で停止できます。

 こうしたジェットフォイルの高性能を支えているのが、ボーイング社が開発した独自技術です。

 推進力の源は、海水を勢いよく後方に噴射するウォータージェットポンプ。スクリュープロペラを使わないため、海洋生物を巻き込みにくいという利点があります。

 安定した翼走姿勢を保つ核心技術が、船首と船尾にあるT字型の水中翼と、それを制御する自動姿勢制御装置(ACS)です。

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