新造はもうムリ!? 海のF1「ジェットフォイル」驚異の性能と超高額すぎる現実

「海の新幹線」とも呼ばれる高速船ジェットフォイル。その驚異的な性能は多くの離島航路を支えてきましたが、建造コストの高騰という課題を抱えています。波の上を「飛ぶ」船の仕組みと、その未来はいったいどうなっているのでしょうか。

キモは「T字型の水中翼」と精密なコンピューター制御

 ACSは波の高さや船体の傾きなどをセンサーで常時監視し、コンピューターが水中翼のフラップ(可動翼)を精密に作動させることで、荒れた海上でも船体を水平に維持します。これらにより、ジェットフォイルならではの快適な乗り心地と、旋回時のスムーズな挙動を実現しているのです。

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低速航行時のジェットフォイル。船首に1基、船体後部に2基(左右に1基ずつ)ある水中翼が、速度が上がるとともに海面に立ち、揚力が生じることで船体が海面から完全に浮き上がり高速が出せるようになる(柘植優介撮影)。

 一方で、この高性能と複雑な構造は、非常に高額な建造コストにつながります。川崎重工が過去に建造した船は1隻あたり20~30億円程度でしたが、現在では新造1隻に70~80億円前後かかるともいわれ、船会社の経営に重い負担となっています。

 さらに、ライセンスを保有していた川崎重工業は2020年をもってジェットフォイルの建造を終了。これにより、国内でジェットフォイルを新造できるメーカーがなくなりました。

 そのため、2025年現在、国内で運航されているジェットフォイルは、1980~90年代に建造された船が多数を占めている状態で、各船とも就航から長期間が経過しています。各社は既存船を大切に維持しながら運航を続けていますが、老朽化に伴う引退は避けられません。

 2020年には、25年ぶりの新造船「セブンアイランド結」が東海汽船で就航しましたが、これが川崎重工業による最後の建造となりました。

 離島航路の維持という重要な役割を担うジェットフォイル。その未来は技術よりも経済に左右されます。単なる企業採算の問題にとどまらず、島民の生活を支える公共交通インフラとして、官民がどう連携し、この高い壁を乗り越えるかが問われています。

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