すべて話そう…「バス停撤去しなさい!」勧告→撤去までの顚末 だから市内随一の観光地に「うちは停まらないことにした」

JR仙巌園駅前に残されたバス停が撤去され、鹿児島交通は停留所を廃止しました。同社を率いるいわさきコーポレーションの岩崎芳太郎会長が、廃止という“荒療治”に至った顛末を明らかにしました。

「もともと駅を造るべきではなかった」

 岩崎氏は仙巌園駅について「もともと駅を造るべきではなかった」と強調します。その理由として「周辺の道路がただでさえすごい渋滞しているのに、駅ができれば(隣接する踏切が止まる時間が長くなって)渋滞が助長されることになるためだ」とし、自身は仙巌園駅開設に反対してきたと説明しました。

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インタビューに応じるいわさきコーポレーションの岩崎芳太郎会長(大塚圭一郎撮影)

 これに対し、鹿児島市などは駅の建設に動き、国は開業に向けて駅前を通る国道10号で「相次いでいた自動車の追突事故を減らすため」として2024年3月に通行ルートを変えました。

 国道10号の鹿児島市街地方面はそれまで直進2車線でしたが、通行ルートの変更に伴って1車線を活用して約200mの左折車線を新設。その車線沿いの歩道に切れ込みを入れ、路線バス用のバスベイを設けました。

 バスベイの供用を始めることによって車道上で停車していたバスの停留所を移し、左折車線上の標識を撤去する計画でした。

 ところが、岩崎氏はバスベイが丁字路の交差点内にあり、鹿児島中央駅行きのバスがバスベイから走行する直進車線へ戻る際に、次の信号までの短い間で2車線分の車線変更が必要になるとして「バスが出るときに(直進車線まで)出にくく、危険だし、渋滞にはまって動けなくなってしまう恐れがある」と危惧したと言います。

 そこでバスベイが完成した後も、路線バスは左折車線の標識がある場所に停車を続けました。すると、国土交通省鹿児島国道事務所が標識の設置者である鹿児島県バス協会に対して3回にわたって標識の移設を求める勧告書を提出しました。

 鹿児島県バス協会の会長は岩崎氏が務めており、運輸関係者は「鹿児島県バス協会は、鹿児島交通が実質的に主導しているようなものだ」と指摘します。鹿児島県バス協会は勧告書に「承諾できない」と回答し、仙巌園前停留所を使っている南国交通と鹿児島交通に対応を任せるとしました。

 鹿児島国道事務所は再三にわたる勧告に応じなかったとして、2025年8月6日付で鹿児島県バス協会に対して移転措置命令を出しました。期限を同年8月末と定められたため、鹿児島県バス協会は左折車線上の標識を撤去しました。

【なるほど“ポツン”だ…】問題のバス停(地図/写真)

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