すべて話そう…「バス停撤去しなさい!」勧告→撤去までの顚末 だから市内随一の観光地に「うちは停まらないことにした」
JR仙巌園駅前に残されたバス停が撤去され、鹿児島交通は停留所を廃止しました。同社を率いるいわさきコーポレーションの岩崎芳太郎会長が、廃止という“荒療治”に至った顛末を明らかにしました。
廃止しても大して問題ではない?
標識があった場所に代わって鹿児島中央駅行きバスはバスベイを発着することを迫られましたが、鹿児島交通を率いる岩崎氏は「それではバスの安全運行を保てない」と問題視。バスベイの代わりに「安全性を確保できる適切な場所」と見なした位置への停留所移設に向け、鹿児島国道事務所へ許可申請をしました。
しかし、移転措置命令の期限となる8月末が迫る中で、申請した許可は下りませんでした。そこで岩崎氏は、鹿児島中央駅行きバスは「あそこ(仙巌園前)でのお客様の乗り降りはなしにして、うちのバスは止まらないことにした」と停留所廃止の背景を解説しました。
残る1社の南国交通は「従来より安全性が向上する」として移設に賛成し、鹿児島中央駅行きバスがバスベイに乗り入れるようになりました。
鹿児島交通の鹿児島中央駅行きバスについて仙巌園前停留所利用者への影響を尋ねたところ、岩崎氏は「(国道10号を直進した)先に鳥越トンネルがあり、手前に(異人館前)停留所があるので、そこからウォーキングディスタンス(徒歩圏内)だ」と説明。仙巌園前停留所で降りていた利用者が異人館前を使うようになっても「ちょっと離れるだけだ」とし、収益への影響もほとんど皆無だと言います。
岩崎氏は「ポツンとバス停」の廃止に至った道路渋滞悪化への懸念に関して「鹿児島市は日本で一番渋滞が多いとも言われており、住民が鹿児島(中心部)に通勤する時の経済ロスが年間数十億円との試算もある」と紹介。仙巌園駅の開業後に国道10号では「実際に渋滞が起きている」と問題視し、「鹿児島県も鹿児島市も(渋滞による経済ロスへの)問題意識がないからこのざまだ」とため息をつきました。
Writer: 大塚圭一郎(共同通信社経済部次長・鉄旅オブザイヤー審査員)
1973年、東京都生まれ。97年に国立東京外国語大学フランス語学科卒、共同通信社に入社。ニューヨーク支局特派員、ワシントン支局次長を歴任し、アメリカに通算10年間住んだ。「乗りもの」ならば国内外のあらゆるものに関心を持つ。VIA鉄道カナダの愛好家団体「VIAクラブ日本支部」会員。





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