なぜバスの座席は“カッチカチ”? 「硬さ」に隠された合理的すぎる理由 言われてみれば鉄道と違うかも
路線バスに乗ると感じる座席の硬さ。実はその硬さ、単なるコスト削減ではなく、安全性や耐久性を突き詰めた結果なのです。いったいどういうことなのでしょうか。
決定的だった「乗車時間」鉄道の座席が“ふかふか”なワケ
では、なぜ鉄道の座席は、バスに比べて柔らかく快適に感じられるのでしょうか。その最も大きな違いは「平均乗車時間」にあります。
ある調査によると、路線バスの利用者の約85%は乗車時間が30分以内です。一方、首都圏の鉄道における平均通勤時間は片道50分近くに達し、1時間以上乗車する人も少なくありません。この乗車時間の違いが、座席に求められる性能の優先順位を大きく変えているのです。
乗車時間が短いバスでは、快適性よりも乗客の乗り降りのしやすさや、加減速やカーブ時に体が滑らない安定性が重視されます。しかし、1時間近く座り続ける鉄道では、乗客の疲労を和らげるための快適性がサービス上の重要な要素となります。
たとえば、「ふかふか」と評される阪急電鉄の座席は、ばねを組み込んだ金属枠の上にフェルトやスポンジなどを重ね、表面にはアンゴラヤギの毛を使ったモケットで仕上げるという、5層もの複雑な構造になっています。
これは、長時間の乗車でも快適に過ごせるようにするための投資であり、コストや重量の面からバスの座席では採用が困難な、鉄道ならではの仕様といえるでしょう。
ちなみに、バスの座席が青色系に統一されがちな傾向には、バリアフリーに関する国の指針が関係しています。
優先席近くの手すりなどを、誰にでもわかりやすいように視認性の高いオレンジ色にすることが推奨された結果、その背景色として対照的な青色が座席に広く採用されるようになった、という背景があります。
結局のところ、バスの座席の硬さは、短い時間で多くの人を安全かつ効率的に運び、長期間にわたって清潔で頑丈な状態を保つという、路線バスに課せられた使命を果たすための「機能」そのものといえるでしょう。





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