なぜバスの座席は“カッチカチ”? 「硬さ」に隠された合理的すぎる理由 言われてみれば鉄道と違うかも

路線バスに乗ると感じる座席の硬さ。実はその硬さ、単なるコスト削減ではなく、安全性や耐久性を突き詰めた結果なのです。いったいどういうことなのでしょうか。

なぜ硬い? 答えは「素材」と「公共交通ならではの事情」にあり

 路線バスに乗った際、座席の硬さを感じたことはないでしょうか。実はその硬さ、単なるコスト削減ではなく、安全性や耐久性を突き詰めたからだとか。いったいどういうことなのでしょうか。じつは路線バスの座席が硬い最大の理由は、その使われ方にあります。

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さまざまなバス(画像:写真AC)

 そもそも、路線バスは毎日、不特定多数の乗客が乗り降りし、時には飲み物をこぼされたり、意図せず傷つけられたりすることもある過酷な環境に置かれています。

 そのため、家庭用のソファのような座り心地よりも、長期にわたる酷使に耐えられることが優先されており、そのためのさまざまな工夫が盛り込まれているのです。

 ちなみに海外では、清掃性や耐破壊性をさらに重視し、クッションすらない硬質なプラスチック製の座席を採用している車両も珍しくありません。それらと比べると、日本のバスの座席が、いかに利用者の乗り心地と実用性のバランスを追求しているかがわかります。

 座席の表面に使われているのは、おもに「モケット」と呼ばれる布地です。

 これは、短い糸が垂直に密集して織り込まれた特殊なパイル生地で、摩擦や摩耗に非常に強いという特徴があります。乗客の衣服との摩擦をパイル糸の先端で受け止めることで、生地の土台となる部分へのダメージを防ぎ、優れた耐久性を実現しています。

 クッション材には、主にポリウレタンフォームが使われていますが、これも家庭用とは異なります。

 バスの座席には、長期間の繰り返しの使用でも「へたり」が少ない、密度の高いフォームが選ばれます。このフォームの耐久性は、JIS(日本産業規格)によって厳格に評価されており、まさに“お墨付き”の頑丈さなのです。

 また、メンテナンスのしやすさも重要な要素です。

 バスの車内は、日常的な清掃に加え、時には高圧洗浄機などを使った強力な清掃が行われることもあります。硬質でシンプルな構造の座席は、こうした清掃作業を効率的にし、汚れや水分が内部に浸透してカビや細菌の温床になるのを防ぎます。

 座席によく見られる幾何学模様も、汚れを目立たせにくい視覚効果を狙ったデザインが多く採用されています。

 さらに、乗客の安全を守るための見えないルールも影響しています。

 バスのような公共交通機関の内装材は、万が一の火災に備え、法律で定められた厳しい「難燃性基準」を満たす必要があります。モケットなどの素材は、この基準をクリアするための特殊な加工が施されているのです。

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