「座席リクライニングは“有料”です」LCC以外でも!? 固定席への変更は「アップグレードだ」「金儲けだろ」 利用者は歓迎?
カナダ第2位の航空会社が、一部機材のエコノミークラスの座席をリクライニングしないものに改装します。座席を切り詰める傾向のあるLCC以外でも、リクライニング機能は“有料オプション”になってくるのでしょうか。
LCCでは既に「倒れない」陣営も
格安航空会社(LCC)の一部は、既に座席のリクライニング機能を取りやめています。アイルランドのLCCのライアンエアーの場合、2004年から背もたれを倒せないようにしています。LCCは運賃を抑えるために大手航空会社より機内の座席数を増やしており、リクライニング機能があると座席の前後間隔を切り詰めにくいためです。
それがLCCではないウエストジェットにも広がったことで、エコノミークラスの座席の背もたれを固定化する動きに拍車がかかるかもしれません。というのも、座席の前後間隔が狭い空間でリクライニング機能を撤廃すれば、乗客同士のトラブル防止に寄与するなどのメリットを見いだせるからです。
筆者がアメリカに駐在中や、海外旅行をした経験に基づくと、一部の日本人利用者のように後ろの座席の顧客に「背もたれを倒していいですか」と尋ねる光景は全く見かけません。後ろを振り向いた上でゆっくりと倒してくれる利用者もいますが、全く振り返ることもなく思いっきり倒す人もいます。
そんな背景もあり、アメリカの航空会社関係者からは「背もたれを倒したときに、うつむいていた後ろの乗客に当たったり、背もたれのテーブルに載せていた飲み物がこぼれたりして口論になることも起きている」と聞きました。また、ウエストジェットの顧客への調査でも一部の回答が指摘したように、アメリカでも背もたれを大きく倒されると「自分の空間が侵害された」という不快感を抱く顧客もいるそうです。
座席の前後間隔が狭いエコノミークラスでリクライニング機能をやめると、そうした諍いや不満の種を取り除くことができます。加えて客室乗務員が離陸時と着陸時に背もたれが元の位置になっているのかどうかを確認する手間も省けます。
ひいては一部の顧客がリクライニング機能を“高付加価値”として受け入れ、背もたれが倒れる座席の利用に追加料金を支払うのであれば、航空会社にとって収入増の機会も生まれます。
“リクライニング有料化”をひっさげたウエストジェットは、成功すればLCC以外の航空会社も雪崩を打って続くかもしれない風雲児になる可能性を秘めていそうです。
Writer: 大塚圭一郎(共同通信社経済部次長・鉄旅オブザイヤー審査員)
1973年、東京都生まれ。97年に国立東京外国語大学フランス語学科卒、共同通信社に入社。ニューヨーク支局特派員、ワシントン支局次長を歴任し、アメリカに通算10年間住んだ。「乗りもの」ならば国内外のあらゆるものに関心を持つ。VIA鉄道カナダの愛好家団体「VIAクラブ日本支部」会員。





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