「座席リクライニングは“有料”です」LCC以外でも!? 固定席への変更は「アップグレードだ」「金儲けだろ」 利用者は歓迎?
カナダ第2位の航空会社が、一部機材のエコノミークラスの座席をリクライニングしないものに改装します。座席を切り詰める傾向のあるLCC以外でも、リクライニング機能は“有料オプション”になってくるのでしょうか。
背もたれ固定のエコノミークラスが基本に
エア・カナダに次いでカナダ2位の航空会社、ウエストジェット航空が、運航している小型ジェット機のボーイング737MAX8型機(737-8)と737-800型機のうち計43機の客室を順次改装。これまではエコノミークラスも原則として背もたれが倒れるリクライニング座席だったのを、背もたれの角度を固定した新たな設計の座席に変えています。
リクライニング座席を利用したい場合、運賃がより高額になる機内最上級クラス「プレミアム」か、エコノミークラスの上級版「エクステンデット・コンフォート」を選ぶ必要があります。改装された最初の機材は2025年10月に運航が始まり、残りも順次改装されます。
ウエストジェットは1988年の冬季オリンピックが開催されたカナダ西部アルバータ州カルガリーに本社を置き、カルガリー国際空港をハブ空港(拠点空港)としています。季節運航を含めて羽田空港や成田、名古屋(中部)、関西各空港とカナダの最大都市トロント、西部バンクーバーを結んでいるエア・カナダに比べると知名度は低いものの、日本路線も運航しています。
成田―カルガリー線を中型ジェット機のボーイング787-9型機が1日1往復しており、筆者(大塚圭一郎:共同通信社経済部次長)は関係者から「カナダ人の訪日旅行人気が高く、利用は堅調に推移している」と聞きました。
座席を改装するボーイング737シリーズはウエストジェットの主力機として国内線のほか、アメリカと結ぶ路線などで運航されており、基本的なエコノミークラス座席の背もたれを倒れなくする措置はカナダで論議を呼んでいます。比較的短距離を飛ぶ旅客機のエコノミークラスで、“リクライニング有料化”は今後の潮流となるのでしょうか、
半数は「倒れなくていい」と回答
ウエストジェットはボーイング737シリーズ43機の基本的なエコノミークラス座席の背もたれの角度を固定化する前に、顧客の反応を調べました。
すると、回答者の半数は背もたれの角度が「固定されていた方が良い」と答えました。その理由として「角度が固定化された座席の後ろに座った人は、座席を倒されることによって個人的な空間が侵される感覚を軽減できる」ことを挙げたそうです。
そこで、ウエストジェットはエコノミークラスの基本的な座席では背もたれが倒れない一方で、ある程度の角度をつけた背もたれの輪郭やクッションを人間工学に基づいて設計したと説明。足元の空間を最大限広げられるように配慮したとし、これらの措置を「アップグレードだ」と主張しています。なお、背もたれの後ろにはスマートフォンを置ける台やテーブルを収納しているものの、映画などを見られる画面は付いていません。
もしもこれまでのように背もたれを倒れる座席を使いたい場合にはプレミアムか、エクステンデット・コンフォートを利用することになります。うち機体最前部に12席設けられるプレミアムは、ゆったりとした座席で、頭部のまくらは4方向に調整できます。プレミアムの座席は通路を挟んで横に2列ずつ配置し、横に3列ずつのエコノミークラスより広く取っています。
その後ろに設ける36席のエクステンデッド・コンフォートも、背もたれを倒すことができます。筆者は2024年8月にウエストジェットのボーイング737-8型機MAXの従来のエコノミークラスに乗っており、この座席に似ているのがエクステンデッド・コンフォートだという感想を抱きました。
ウエストジェットのサマンサ・テイラー上級副社長は「刷新された客室のレイアウトは顧客の多様な好みに応えており、より充実したアメニティーと広い足元のプレミアムの座席を選ぶのでも、自分の空間はより狭くてもより手頃な料金の航空券を選ぶのでも、顧客に楽しんでもらえる幅広い商品を紹介できることをうれしく思います」とコメントしています。
一方、カナダ放送協会(CBC)によると、今回のウエストジェットの改装についてマギル大学のジョン・グラデック講師(航空経営)は「金儲けが狙いだ」と切り捨てました。





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