「おいどう見ても空母だろ!」→「いや、違うよ?」ソ連はどう“言い逃れ”? 実際にあった“珍対策”とは
空母の航行を制限するモントルー条約。これをパスするためにソビエト連邦が考えた方法とは?
もはや言い逃れできないほど空母だが?
キエフ級の後、ソ連はより空母に近い外観の重航空巡洋艦を建造します。それがアドミラル・クズネツォフ級(11435型重航空巡洋艦)「アドミラル・クズネツォフ」です。
同艦はカタパルトこそ有していないものの、スキージャンプ式飛行甲板とアングルド・デッキを備え、発艦と着艦を別の甲板で行える構造となっていました。さらに固定翼機を着艦させるためのアレスティング・ワイヤーも備え、完全に空母といえる艦でした。
艦載機もSu-33やMiG-29Kといった固定翼超音速戦闘機、Ka-31早期警戒ヘリコプターなど、空母として十分な戦力を具備していました。
もはや言い逃れし難い外観と装備でしたが、ソ連は「対艦ミサイルを搭載しているため、対艦戦を想定した巡洋艦である」と主張して海峡通過を許可させ、2番艦「ヴァリャーグ」の建造も進めました。
しかし、完成した空母に近い艦艇群は、ほどなく訪れたソ連崩壊と、装備を引き継いだロシアの財政難によって十分に機能したとは言い難い状況となりました。キエフ級は資金難からすべて他国へ売却され、「アドミラル・クズネツォフ」は唯一の運用可能な“空母のような艦”として残されたものの、運用中はトラブルが頻発。2018年以降はドック入りしたままで、退役の噂も出ています。
唯一、建造途中で放置されていた「ヴァリャーグ」のみ、2000年代初頭にウクライナから中国に売却され、改修を経て「遼寧」として現役で運用されています。
この「ヴァリャーグ」売却の際、トルコは同艦を空母とし、モントルー条約を盾に海峡通過を当初拒否しました。しかし最終的に中国側が多額の保険料や観光客誘致の約束を提示したことで、トルコはこれを受け入れ、同艦は海峡通過を果たしました。ロシア・中国だけでなく、海峡を管理するトルコのしたたかさも垣間見ることができます。
Writer: 凪破真名(歴史ライター・編集)
なぎはまな。歴史は古代から近現代まで広く深く。2019年現在はフリー編集者として、某雑誌の軍事部門で編集・ライティングの日々。趣味は自衛隊の基地・駐屯地めぐりとアナログゲーム。





コメント