「うちの戦闘ヘリいりません?」豪がウクライナに“まだ新しめな”戦闘ヘリ供与を検討 “全機退役”は早すぎない?

オーストラリア陸軍の主力戦闘ヘリコプターとして運用されてきたタイガーARH。しかし、オーストラリア陸軍では運用開始から20年ほどでその後継機導入へと踏み切りました。ここに至るまでには、一体どのような経緯があったのでしょうか。

痛恨の「洋上運用能力欠如」 後継機では解決済み?

 オーストラリア海軍は、改修を加えればF-35B戦闘機を運用できるキャンベラ級強襲揚陸艦を運用していますが、同国海空軍にはF-35Bを導入する計画は無く、洋上での攻撃能力は搭載する戦闘ヘリコプターに依存しています。オーストラリア海軍は2019(令和元)年5月にシンガポールで開催された海洋防衛・セキュリティの総合イベント「IMDEX2019」に、タイガーARHを搭載した「キャンベラ」を参加させており、その途上で同機の洋上運用試験を行っています。

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タイガーARHの後継機としてオーストラリア陸軍が導入を決定したAH-64E(画像:オーストラリア陸軍)。

 しかし、筆者(竹内 修:軍事ジャーナリスト)が話を聞いたオーストラリア海軍の方によれば、もともと艦上運用を想定していないタイガーARHの洋上運用は困難を極めたとのこと。

 後継機のAH-64Eも艦上運用を想定して開発されたわけではないのですが、AH-64DのAN/APG-7レーダーには無かった、洋上目標を捜索・追尾する「マリタイムモード」が追加されたことで、洋上飛行時のナビゲーションや敵の小型艦艇などに対する対処能力が強化されています。AH-64EによるタイガーARHの更新は、キャンベラ級の航空攻撃能力を強化したいオーストラリア海軍にとって福音となったでしょう。

 タイガーはオーストラリアのほか、共同開発国のフランスとドイツ、スペインの4か国に採用されています。フランスとスペインは当面ティーガーの運用を続ける予定で、2022年に近代化改修契約を締結していますが、ドイツは2032年までに全機を退役させて、エアバス・ヘリコプターズが開発した武装キット「H Force」の搭載が可能な汎用ヘリコプターH145Mで更新する計画を進めています。

 採用された4か国のうち2か国での退役が予定されており、黄昏を迎えた感すらあるタイガーですが、ウクライナに供与されれば評価が変わる可能性もあります。

 というのも、1950年代に開発されたM113装甲車や、1960年代に開発されたゲパルト対空自走砲など、もはや開発国や導入国ではあまり役に立たないと判断されてウクライナに供与された防衛装備品の中には、目覚ましい活躍を見せたものがあるからです。

 ただこれは、ロシアに比べれば兵力で劣るウクライナが、知恵を振り絞って、役に立たないと見做されて供与された防衛装備品の使い方を見出したがゆえのことなのです。

 オーストラリアのウクライナへのタイガー供与は未だ正式決定していませんが、仮に供与が実現した場合、ウクライナが適切な使い方を見出すことで評価が急上昇……ということもあるのかもしれません。

【見た目は超絶カッコイイのに…!】オーストラリア陸軍が運用するタイガーARHを写真で(画像)

Writer:

軍事ジャーナリスト。海外の防衛装備展示会やメーカーなどへの取材に基づいた記事を、軍事専門誌のほか一般誌でも執筆。著書は「最先端未来兵器完全ファイル」、「軍用ドローン年鑑」、「全161か国 これが世界の陸軍力だ!」など。

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