3年8か月運休の赤字ローカル線を「ミニ新幹線」に!? 「もう一つの新幹線」より熱を帯びてきたワケ

国道のトンネル工事で約3年8か月も運休していた赤字ローカル線を“ミニ新幹線”に転換しようと、地元の自治体や経済界が自虐的なチラシまで作ってアピールしています。その背景には、いくつもの思惑が重なっているようです。

新庄延伸時よりもはるかにお金がかかる!?

 ただし、現時点で約2300億円と試算されている事業費の捻出が課題となり、工期も約25年と見込まれています。吉村知事は県議会で、山形新幹線を庄内へ延伸すれば米沢トンネルの整備効果を「より一層、庄内にも及ぼすことが可能になる」と言及しています。

 これに庄内地方の企業幹部は「山形新幹線を延伸する可能性をちらつかせることで、庄内地方からの応援も受けたいとの思惑があるのではないか」との見解を示しました。

 1992年に福島―山形間が開業した山形新幹線が99年に新庄(新庄市)へ延伸した際には、総事業費343億円のうち山形県は139億円を支出しました。庄内延伸でも県の資金拠出が不可欠で、前段階として現時点での事業費概算や費用対効果などを調べることが求められます。

 このため庄内、最上両地域の市町村長と酒田、鶴岡、新庄の各商工会議所会頭は2025年12月8日、吉村知事へ庄内延伸に向けた調査の早期実施を求める要望書を提出しました。山形県の有力紙、山形新聞の12月9日付記事によると吉村知事は「新たな調査を行うとは即答できない」としつつ、「地域が盛り上がり、活発に議論することが将来につながる」と訴えました。

 それに呼応して庄内地方の行政と経済界は、山形新幹線の庄内延伸に向けた広報媒体を作成するなどして誘致活動を加速させる方針です。

 酒田商工会議所の加藤会頭は筆者に対して「山形新幹線の庄内延伸は、米沢トンネル(仮称)の整備効果を高めるとともに、山形県の4地域を山形新幹線で結ぶことによって本県の一体性をより高め、県民の福祉向上、産業、観光振興をはじめとして県土の一体的な発展に結びつくものと確信しています」と強調しました。

 その上で、山形新幹線の庄内延伸に向けて「吉村知事の現在の任期中(5期目の2025年2月14日からの4年間)に調査を実現させたい」との大きな目標を掲げました。

ミニ新幹線にすれば“存続”は確定!

 加藤会頭はさらに、庄内延伸を目指すもう一つの狙いを「赤字路線の陸羽西線を廃線としない最善の策にもなるからだ」と打ち明けました。

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陸羽西線の運転再開を記念し、酒田駅に設けられたコーナーのメッセージボード(大塚圭一郎撮影)

 陸羽西線はバス代行期間中の2024年度の平均通過人員が117人と、JR東日本発足初年度(1987年度)の2185人の5%まで落ち込んでいます。国道のトンネル工事によるバス代行期間中は、国が運行費用を出しました。しかし列車運行が再開したことで、利用者数が大きく上向かなければ存亡の危機に立たされかねません。

 もしもミニ新幹線化が実現すれば、新庄と余目の間にある駅の存廃が議論になる可能性はあるものの、路線存続は確定します。

 陸羽西線の沿線にある庄内町の富樫 透町長は「陸羽西線は運行を再開したものの、現状の乗降客数と採算性のみを考えれば廃線議論が高まりかねない」と危機感を示した上で、「庄内への山形新幹線延伸は、陸羽西線存続に向けた起爆剤になる」と力説します。山形新幹線の庄内延伸を目指した誘致活動は、陸羽西線の存続を賭けた“ウルトラC”の任務も帯びています。

【あれ?食い違う?】これが山形の「3つの新幹線延伸」構想です(地図/写真)

Writer:

1973年、東京都生まれ。97年に国立東京外国語大学フランス語学科卒、共同通信社に入社。ニューヨーク支局特派員、ワシントン支局次長を歴任し、アメリカに通算10年間住んだ。「乗りもの」ならば国内外のあらゆるものに関心を持つ。VIA鉄道カナダの愛好家団体「VIAクラブ日本支部」会員。

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