ホルムズ海峡閉鎖!→自衛隊は「日本の生命線」でタンカー守れるのか? 現行法での“ギリギリの対応”とは

中東情勢の緊迫化で、世界の石油・天然ガスの大動脈であるホルムズ海峡が事実上封鎖されました。もしアメリカなどから民間船の護衛を依頼された場合、海上自衛隊は現行法で対応できるのでしょうか。

「自分の艦を守る」が結果的に民間船を守ることに でも本当は…

 しかし、いくら武力の行使には当たらないとしても、この規定で防護できるのは、防護対象に指定された自衛隊の装備、この場合には海上自衛隊の護衛艦のみということになり、一見すると民間船舶の防護にはつながらないようにも思えます。ところが、過去の国会答弁を見てみると、あながちそうとも言い切れないのです。

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護衛艦と民間船舶が並走するイメージ。画像はソマリア沖でコンテナ船の護衛に就く海上自衛隊の護衛艦「さみだれ」(画像:海上自衛隊)。

 たとえば、1999(平成11)年に、当時の野呂田防衛庁長官が「紛争避難民を乗せた他国の民間船舶が海上自衛隊の護衛艦の前で攻撃を受けた際、これに対処することはできないのか?」と問われた際、このように答弁しています。

「一般論として申し上げますと、自衛隊法の95条においては自衛隊の武器等という、我が国の防衛力を構成する重要な物的手段を破壊、奪取しようとする行為から、これを防護するため極めて受動的かつ限定的で必要最小限度の武器使用について規定をしております。

 御指摘のような状況においては、他国船舶に関する不測の事態が同時に自衛隊船舶を破壊、奪取しようとする行為であるような場合には、これが同条の要件を満たす限りにおいて同条の規定に基づく武器の使用は可能であると考えております」(第145回国会 参議院 日米防衛協力のための指針に関する特別委員会 第3号 平成11年5月10日 野呂田芳成 防衛庁長官答弁)

 つまり、他国の民間船舶に対する攻撃が、同時に護衛艦に対する攻撃にも該当し得るような場合には、武器等防護のための武器使用で対応することができるわけです。では、どういった場合がそのようなケースに該当するのでしょうか。参考になるのは次の国会答弁です。

「仮に自衛隊とほかの船との、船舶が極めて近接しているような場合、これは結果的に、確かに自衛隊の武器等の防護のために武器を使用することが当該ほかの船舶に対する攻撃を防ぐ反射的効果を有する場合がある、こういうことも従来申し上げておりますけれども、これ、あくまで自衛隊の武器等の防護によって生じる反射的な効果であると、こういう説明をさせていただいているところでございます」(第201回国会 参議院 外交防衛委員会 閉会後第1号 令和2年7月9日 槌道明宏 防衛省防衛政策局長答弁)

 つまり、護衛艦と物理的に接近している他の船舶がいるような場合に、仮にミサイルが飛来し、護衛艦が自艦防護のために武器を使用してこれを迎撃したとすると、それが結果的に民間船舶をも防護したことになる、ということです。

 したがって、たとえば海上自衛隊の護衛艦を、不測の事態に備えるため海上警備行動の発令を念頭に置いた情報収集活動のために派遣(防衛省設置法第4条18号)し、その護衛艦の乗員に「自分の艦を対象とした武器等防護のための武器使用」を命じます。そして、民間船舶をエスコートする形で並走していれば、仮にミサイルや無人機が飛来してきたとしても、これを迎撃することは可能です。しかも、これはあくまで「自艦防護」ですから、並走する船舶は必ずしも日本籍船に限る必要はないのです。

 しかし、これはあくまでも「現行法で対処するならば」という頭の体操としてのお話であり、現場に派遣される護衛艦の乗員に対して、とてもではありませんが胸を張って「これで大丈夫だ!」と言えるようなものではありません。国際的な海上交通の恩恵を受ける日本が、いかにその安全を守る活動に堂々と寄与することが出来るのか、国会での真剣な議論と法改正が望まれます。

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Writer:

軍事ライター。現代兵器動向のほか、軍事・安全保障に関連する国内法・国際法研究も行う。修士号(国際法)を取得し、現在は博士課程に在籍中。小学生の頃は「鉄道好き」、特に「ブルートレイン好き」であったが、その後兵器の魅力にひかれて現在にいたる。著書に『ここまでできる自衛隊 国際法・憲法・自衛隊法ではこうなっている』(秀和システム)など。

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