70km/h超え! 世界最速エレベーター、どう実現? 「新幹線」などのノウハウ注入も

騒音対策に高速鉄道の技術

――新たに開発された技術とはどのようなものでしょうか?

 揺れや騒音を抑える装置や、気圧の制御など、快適性を支える技術に新機軸が多く盛り込まれています。垂直方向にかごの走行を案内する「ガイドレール」が設けられているほか、かごの四隅でそのレールに接する「アクティブガイドローラー」と呼ばれる装置が、感知した振動を打ち消す働きをします。また、急激な気圧の変化による耳詰まりを軽減するため、かご内の気圧を制御しています。

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「アクティブガイドローラー」のイメージ(画像:日立ビルシステム)。

 かごの形にも工夫があります。通常の箱型ではなく、上端と下端が丸みを帯びた「流線型」にすることで気流を受け流し、気流の乱れによる騒音を抑制しています。これは日立グループがもつ、新幹線をはじめとする高速鉄道の製造ノウハウを反映しており、鉄道車両の先頭形状を参考に、風洞実験をくり返して最適な形状を打ち出しました。

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従来型のかごと、「流線型」のかごの比較イメージ。「流線型」は気流を受け流しやすい(画像:日立ビルシステム)。

――「ギネス世界記録」への申請はしますか?

 その予定はありません。営業運転では分速1200mまでしか速度を上げないからです。このエレベーターは、「最高分速1200m(時速72km)」で受注したものですが、余裕をもって分速1260mまで耐えられるように設計しているのです。今回の記録は、さらなる高速化需要を見込んだ速度試験において、制御装置や安全装置に改良を加えたうえで樹立したものです。

※ ※ ※

 現在、「ギネス世界記録」に登録されている世界最高速エレベーターは最大分速1230m(73.8km/h)で、2016年に中国・上海の超高層ビル「上海中心大厦」(高さ632m)へ納入された三菱電機製のもの。それ以前は最大分速1010m(60.6km/h)で、2004(平成16)年に竣工した台湾・台北の「台北101」(高さ508m)にある東芝エレベータ製のものでした。

 日本のエレベーター大手3社で、今後も「速度競争」が加速していくのでしょうか。

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コメント

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4件のコメント

  1. これ、ケーブルカーに応用しませんか
    ゆっくり上下するケーブルカーも趣あって良いですが、高速で上下するケーブルカーも観光要素として成立すると思います

  2. エンジンブレーキは生きていた!

  3. ワイヤー(?)が切れませんように・・・。

  4. 高速斜行エレベータですね。
    屋外露出する斜面をはうケーブルで屋内・垂直のエレベータケーブルと同じことができるでしょうか?
    チューブみたいなので覆ってやればなんとかできそうですが(どっかの斜行エレベータであった気が)
    観光地向けにはなりそうにないですね。
    傾斜と加速度によっては下りの加速でケーブルが緩みそう?