自転車は公共財へ? 広まる自治体のシェア自転車、利用が激増した都内6区の取り組み

交通機関との競合は…?

——相互乗り入れはどのような経緯で実現したのでしょうか?

 交通機関を補完する交通手段として、区の外から出られないというのは利便性を欠きますので、シェア自転車の導入時から次の目標として相互乗り入れを位置付けていました。それぞれの区でシェア自転車事業の利用ルールや料金体系も異なっていましたが、およそ1年半かけてこれらを統一し実現しました。

——鉄道やバスといった交通機関と競合することはないのでしょうか?

 それはないと思います。というのは、シェア自転車にはGPSなどのユニットが取り付けられており、通行したルートの位置情報をトレースすることができるのですが、たとえば特定の地点間で5000回、1万回もの移動があるという例は確認されていません。もしそういう場所があれば、そこにはバスを通すことを検討するでしょう。自治体としては、合理性のあるものを提供することが第一です。

——利用が多いポートでは、自転車がすべて貸し出されていることもあるようですが、どのように対策しているのでしょうか?

 確かに、駅に近く通勤で利用される方が多いポートなどでは、特定の時間帯に利用・返却が偏り、一時的に自転車がまったくなくなることもあります。このため、トラックで自転車を回収し再配置することを行っています。特定のポートでは「何時の段階で何台必要」ということがわかっていますので、朝の通勤利用に備えて、夜のうちに必要な台数を配置しています。

※ ※ ※

 港区によると、近隣自治体でも新たにシェア自転車の導入予定があり、相互乗り入れの範囲は今後さらに拡大するといいます。東京に限らず、導入自治体は全国的に増えており、国土交通省の資料によると2016年10月の段階で87都市において本格導入済み、導入検討中や社会実験中の都市まで含めると141を数えています。

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富山市のシェア自転車ステーション。フランス企業の子会社シクロシティが運営している(2016年8月、中島洋平撮影)。

 前述の都内6区におけるシェア自転車事業は、NTTドコモの子会社であるドコモ・バイクシェア(東京都港区)が運営しています。業界団体である日本シェアサイクル協会(東京都中央区)によると、シェア自転車事業の運営者は業種もさまざまで、「国もシェア自転車事業への参入を推奨している」といいます。

 2017年9月現在、中国でシェア自転車を展開しているモバイク(摩拝単車)が日本へ進出しているほか、DMMやメルカリといったウェブサービス大手もシェア自転車事業への参入を表明しています。港区地域交通課によると、「今後は都心部でも、自治体主導のシェア自転車だけでなく民間による同様のサービスが増えるでしょう」と話します。

【了】

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コメント

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4件のコメント

  1. 確かにこれなら不法駐輪もある程度どうにかなりそうですが、乗り逃げや盗難の危険はありますね。

  2. 行政は自転車マナー悪化をよく促進できるね。
    今や自転車は車以上の公共交通機関の敵に変わりつつあるのに補完とか言うなんてあり得ない。
    シェアサイクルなんてやっても鉄道利用者が自転車にシフトするだけでお話しにならない。

    観光地の自動車規制も大事だが、違法駐輪の多い地区にはバスや電車を促進させる為に自転車規制も必要ではないかと思う。
    実際、自転車促進でマナーの悪い自転車の増加や公共交通機関離れを悪化させるだけだといい加減、気付け。

    勿論、観光地には自動車も自転車も規制しながら鉄道の敷居を下げた方が景観を良くするのは言うまでもない。
    自転車規制は歩行者が歩きやすくする政策にもなれます。

  3. 港区の事業開始は2014年の8月ですね。

    • ご指摘ありがとうございます。
      公式に発表されている2014年10月に訂正いたしました。