「タクシー定期券」導入なるか? 国交省が2018年度実験へ 先行事例に見る効果と課題とは

定期券利用者は「新規9割以上」 しかし課題も

 タクシーの定期券については、旅行大手のJTBが福岡市で2016年に「JTBジェロンタクシー」の名で実験を行っています。これは70歳以上の高齢者限定で、JTBが旅行業法に基づく「募集型企画旅行商品」として利用者に1か月有効の定期券を販売。利用者はその都度、サービスに加盟するタクシー会社に配車を依頼し、乗ったぶんに応じた運賃をJTBがタクシー会社に支払うというものでした。同社に話を聞きました。

――「JTBジェロンタクシー」はどのような経緯で実施されたのでしょうか?

 免許を返納した高齢者の「日常の足」となるツールとして企画し、福岡市と連携した社会実験として2016年1月から10月まで2期にわけて実証実験を行いました。ちょうど高齢者の自動車運転事故や免許返納に関する報道が増えてきた時期で、福岡市としても返納後の足がどうなるのか問題視していたという背景があります。

――定額エリアや運賃はどのように決めたのでしょうか?

 お客様がふだん利用される商店や駅、病院と自宅とのあいだなど、エリアを限定したうえで、そのあいだを2、3日に1度利用される想定でエリアと料金を設定しました。また、利用時間はタクシーの閑散時間帯にあたる昼間で、朝夕のラッシュ時は不可としています。エリア、時間ともに限定しましたが、お客様のおおよその行動はカバーできたと考えています。

――どのような人が利用し、どれほどの効果があったのでしょうか?

 たとえば、足をケガして買い物が不自由だった方、事故を起こしてご家族から運転を控えるよう言われていた方、人工透析を受けるために頻繁に病院に通っていた方などが利用されました。特に女性のお客様から好評で、「タクシーにひとりで乗るのが怖い」とおっしゃっていた方も、次第に運転手と顔なじみになり、安心して利用できたそうです。お客様の9割以上が、ふだん全くタクシーを利用していなかった方でした。

 ただ、全体の利用者数はそれほど多くはありませんでした。おもに新聞の折り込みチラシで告知をしましたが、それを見ない方も多く、テレビニュースで取り上げられたときには問い合わせが増えたものの、一時的でした。潜在的なニーズの高さとともに、高齢者に新しいサービスを周知する難しさも実感しました。

※ ※ ※

「JTBジェロンタクシー」における定期代は、利用者の自宅を基点としたエリア別、指定地間別に細かく分けられ、当初は税込み1か月2万8000円~6万8000円、2016年7月~9月には1万9500円~4万2000円と設定されていました。JTBによると、タクシー会社にとっては「毎月2~3万円分乗られる方が新規に増え、増収につながった」といいます。なお、このサービスは現在行われていませんが、同様のサービスを別途検討しているそうです。

【了】

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コメント

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5件のコメント

  1. 偽造問題はどうするんだろうか。それと、利用者として想定している人の中に、障害者割引と重複する可能性が高い人もいるみたいですが。それらが解決しても、定期券方式はあまりうまく行かない気がする。

  2. 免難しいね、なにせ緩和や新規参入で異常に増車認可してドライバーの収入問題が浮上したり、免許返納にしてもこの辺りの代替え移動手段の煮詰めが優先だったのではないでしょうか?まだまだ現役の車両がドライバーの収入対策としての減車や行政処分としてナンバー切って車庫に眠る姿を見ると何やってんの?と思いますがね

  3. 叔父貴が個人やってるけどパイロットとか固定の長距離客があればアホくさくて無線タクなんか2度とやらねー!とか言ってたな

  4. 事業者の収入が減らないようというだけでなく、そこで働く運転手さんにしわ寄せ(歩合給の減など)がいかないよう規定しないといけないと思います。

  5. 最後のグラフが中々露骨だが、23区内での“手上げ”乗りが相変わらず旺盛であるところを見ると、地方での落ち込みは相当なものなのだろう。

    にしても、23区内の朝はホントにタクシーが捕まらないな・・・。