海に浮かぶ和風建築? 瀬戸内海をゆく新クルーズ船「ガンツウ」とは(写真19枚)

ゆったり漂泊、観光地には行かず どんな旅に?

「ガンツウ」の客室は4タイプ全19室で、旅行代金は2泊3日で40~100万円(2017年10~11月出航分、2名1室利用の場合)。前出の「飛鳥II」の場合、国内2泊3日のクルーズが10万円前後からなので、比較的高めに設定されています。その旅の内容について、再びせとうちクルーズに話を聞きました。

――そもそも「ガンツウ」をなぜ造ったのでしょうか?

「瀬戸内の良さは海にこそある」という確信のもとで誕生した客船です。わたしたちはもともと町おこしを手掛けており、「瀬戸内のために何をしたらいいのか」という発想で、船のデザインやアクティビティを考えていきました。

 計画段階ではもちろん、ほかの船も参考にはしましたが、いわゆる「豪華客船」というイメージは当てはまりません。老舗旅館やホテルなどを含め、さまざまなリゾート施設のアクティビティやおもてなしのよいところを凝縮させています。

――一般的なクルーズの場合、寄港地での観光も旅の目的のひとつですが、「ガンツウ」ではどのようなプランが用意されているのでしょうか。

 本船自体に寄港地という概念はなく、いわゆる観光地には行きません。「せとうち漂泊」というコンセプトのもと、瀬戸内海沿岸の景勝地で着岸せずに錨泊(海上でいかりを下ろして留まること)を重ねてゆったりと周遊し、小型のテンダーボートで途中の島々に上陸します。そこで漁師体験をしたり朝の散歩をしたり、あるいは協力いただいている漁師さんが船まで海産物を届けてくれたりと、「島の日常」を体験します。

――価格や客層については、どのようにお考えでしょうか?

 1室40万円(税込)からの料金はオールインクルーシブ(編集部注:旅行代金に食事やドリンク、プールなどの施設料金、道中のアクティビティ料金などがほぼ含まれることを意味する用語)で、発着地であるベラビスタマリーナ(広島県尾道市)から広島空港あるいはJR福山駅までの往復送迎も含まれています。

 お客様の層としては富裕層ということになりますが、世界中の観光地やホテルに行きつくしているような方、これまでにないような体験を求めている方が、しっくりくるかと思います。そのような体験を瀬戸内で作り、地域のブランド力を高めていくことが狙いです。

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客室の例。約80平方メートルの「グランドスイート」(画像:せとうちクルーズ)。
船首のオープンデッキ(画像:せとうちクルーズ)。
左舷に設けられた縁側(画像:せとうちクルーズ)。

※ ※ ※

 これまでのクルーズ船と全く異なるコンセプトの「ガンツウ」。せとうちクルーズは「ライバルはない」といいます。「瀬戸内にたくさんの海外客船も来ており、瀬戸内を周遊する新造船もできると一部報道でありますが、ともに瀬戸内観光において市場価値を盛り上げていければ」と話します。

 ちなみに、せとうちクルーズは「ガンツウ」ならではの大きな特徴のひとつとして、「船首に向いたスイートルーム」を挙げます。「船首側は風の影響などが大きいため、通常の客船では、スイートの客室は船尾側に設けられます。船首に向いた窓から進行方向の風景を楽しめるのは、波がおだやかな瀬戸内海だからこそ可能な構造」なのだそうです。

【了】

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1件のコメント

  1. 海の上行くななつ星