キハ58系、中国・天津に放置 いったいなぜ? 背景に「幻の観光鉄道」計画か
かつて日本全国を走り回っていたキハ58系ディーゼルカーが、遠く離れた中国の港湾地帯で「放置」されています。なぜ中国に渡り、何にも使われずに放置されているのでしょうか。
中国の国際貿易港に昔懐かしい「キハ」の姿
中国の首都、北京から南東約120kmの位置にある「天津」。人口およそ1500万人を誇る、中国でも有数の大都市です。渤海に面した天津港を有し、国際貿易の拠点としても成長しました。
国際貿易を担う港湾や空港には、税関手続きが完了していない物品を一時的に留め置くスペースがあり、「保税区」「保税地域」などと呼ばれています。天津港にも保税区が設けられていますが、ここに日本のJR線で運転されていた「キハ58系」の廃車体が2両、なぜか10年以上にわたって放置されているといいます。
キハ58系は、非電化路線の急行列車用として開発された、昔懐かしい日本国鉄のディーゼルカーです。1960年代に大量生産され、全国各地の急行列車で活躍しました。しかし、老朽化に伴い新型ディーゼルカーに置き換えられる形で徐々に数を減らし、定期列車での運転は2011(平成23)年に終了しました。
日本では現在、JR東日本盛岡支社が保有している3両と、いすみ鉄道(千葉県)がJR西日本から譲り受けた1両の計4両しか運転されていません。いずれも観光客向けの臨時列車や団体列車で使われており、毎日運転されているわけではありません。
このほか、海外の鉄道事業者に譲渡されたキハ58系もあり、一部がロシア・サハリンやタイ、ミャンマーに渡りました。
また、中国のネット掲示板では、かなり前から「天津港の保税区に日本のディーゼルカーが放置されている」との情報が出回っていました。
そこで2018年1月14日(日)、中国のネット情報や衛星写真などを手がかりに天津港の保税区を探し歩いたところ、保税区の敷地内でキハ58系が2両、南北に縦一列で置かれているのを発見しました。
同型だけど色違いの2両が一列に
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Writer: 草町義和(鉄道ニュースサイト記者)
鉄道誌の編集やウェブサイト制作業を経て鉄道ライターに。2020年から鉄道ニュースサイト『鉄道プレスネット』所属記者。おもな研究分野は廃線や未成線、鉄道新線の建設や路線計画。鉄道誌『鉄道ジャーナル』(成美堂出版)などに寄稿。おもな著書に『鉄道計画は変わる。』(交通新聞社)など。