千鳥配置の「二重プルマン」に乗ってみた 中国の高速寝台電車「CRH2E」に新タイプ

「夜行列車大国」の中国で新しいタイプの寝台車が登場しました。新幹線タイプの高速電車に「特殊配置」の寝台を設置。利用者のプライバシー確保を図りつつ定員の大幅な減少を抑えているのが特徴です。寝心地はどうなのか、実際に乗ってみました。

「夜行列車大国」中国に新タイプの寝台車

 日本では風前のともしびとなった夜行列車ですが、中国ではいまも多数の夜行列車が運転されています。

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北京~上海間の運転を開始した新タイプの寝台電車(2018年1月、草町義和撮影)。

 夜行列車の多くは機関車が客車を引っ張るタイプですが、近年では高速電車タイプの寝台列車も運転されるようになりました。2008(平成20)年、JR東日本のE2系新幹線電車をベースにした高速電車「CRH2形」に、寝台車バージョンのCRH2Eが登場。2009(平成21)年からは、カナダ・ボンバルディア社の高速車両ブランド「ゼフィーロ」をベースにした寝台車のCRH1Eも運転されています。

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2008年にデビューしたCRH2E(2009年7月、草町義和撮影)。
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2009年にデビューしたCRH1E(2016年1月、草町義和撮影)。

 そして2017年7月、CRH2Eに新しいタイプの寝台車が登場。車内の寝台は、世界的に見ても例のない特殊な配置が採用されたといいます。ただ、中国のメディアが報じていた新タイプ寝台車の写真や映像を見ると、いままでと違う配置になっているのは確かなようですが、どこがどう特殊な配置なのか、イマイチよく分かりませんでした。

 時刻表や中国の旅行サイトなどで調べてみたところ、北京~上海間では夜行運転を伴う列車が5往復あり、2往復は昔ながらの機関車けん引タイプの夜行列車。残り3往復が高速電車タイプの寝台列車です。このうち、北京21時16分(現地時間、以下同じ)発の上海行きと、上海19時10分発の北京行きが、新タイプのCRH2Eになります。

 そこで2018年1月13日(土)、新タイプのCRH2Eに乗ろうと、上海へ飛びました。

「頭文字D」の高速列車に設けられた新型寝台

 上海浦東空港からリニアモーターカーと地下鉄を乗り継ぎ、出発地点の上海駅に到着したのは18時ころ。出発まで1時間以上の余裕があります。日本をたつ前に旅行サイトで列車の予約を入れておきましたが、切符自体はまだ入手していません。

 駅の脇にある切符売り場のビルに入り、予約番号を表示させたスマートフォンの画面と自分のパスポートを提示します。中国の切符はダフ屋対策もあり、身分証明書がないと切符を買うことができません。

 予約番号とパスポートを確認した駅員は端末のキーワードをたたき、すぐに切符が出てきました。券面に記されている数字や文字のうち、「上海」「北京南」「2018年1月13日19:10」は何とか分かりますが、「D312」「動臥」「16車001号下鋪」などの英数字や簡略化された中国の漢字(簡体字)もあり、いまいち意味が分かりません。

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寝台列車の切符(2018年1月、草町義和撮影)。

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Writer: 草町義和(鉄道ニュースサイト記者)

鉄道誌の編集やウェブサイト制作業を経て鉄道ライターに。2020年から鉄道ニュースサイト『鉄道プレスネット』所属記者。おもな研究分野は廃線や未成線、鉄道新線の建設や路線計画。鉄道誌『鉄道ジャーナル』(成美堂出版)などに寄稿。おもな著書に『鉄道計画は変わる。』(交通新聞社)など。

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