【空から撮った鉄道】もうすぐ消えるか…札沼線のキハ40を追いかけた日

札沼線は札幌近郊の通勤通学輸送を担い、末端区間は1日1本のローカル線というふたつの顔を持ちます。末端区間がまだ3本走っていた時代に空撮しました。

旋回して戻って撮影の繰り返し

 北海道の札幌近郊を走る札沼線。最近ときどき耳にするのは「日本で一番早くに終列車がある路線」「終点の新十津川駅が数十年ぶりに有人駅となる」「そろそろ部分廃止が協議されている」などといった言葉です。一部に明るい話題はありつつも、「廃止」という言葉がちらつく不安定な情勢ばかり話題になります。

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石狩月形駅で発車を待つキハ40(2008年8月26日、吉永陽一撮影)。

 ちょうどこの記事を執筆中、JR北海道は札沼線北海道医療大学駅~新十津川間を含む4路線の廃止を明らかにしたとのニュースが流れてきました。これからどうなるのか、目が離せない状況です。

 私は札沼線の末端部が1往復になってから以降、仕事の流れが変わって北海道へ訪れていないのですが、3往復あった時代はローカルの情景を追って札沼線・石狩月形~新十津川間によく行きました。

 札幌近郊なのでふらっと立ち寄りやすく、札幌で空いた時間があれば列車を乗り継いで新十津川まで行ったものです。また私はよく幌加内方面へ行くために、並走する国道を利用します。その道中、浦臼駅から新十津川駅までの区間は線路端に「ハエタタキ」と呼ばれる古くからの電信柱があって、これを入れて撮影するのが何よりの楽しみなのです。

 何度も通っているうち「そういえば丘珠空港から近いし、手頃に空撮できる」と思いました。そこで2008(平成20)年、札沼線の末端区間を空撮しました。

 旭川方面から南下したので、まず新十津川駅が見えました。しかし列車はまだいません。南下すれば下り列車が前方より向かってくるはず。はたして、石狩月形駅の手前の林のなかからキハ40系気動車のキハ40形が1両、顔を出しました。

 白いボディのキハ40を捉えると、あとはひたすら追尾していきます。ある程度の高度を保ちながら旋回しますが、どうしてもキハ40のほうが遅いです。いや、遅すぎる。飛行機との速度差がありすぎて、こちらもかなり速度を落としますが、ちょっと旋回するだけでだいぶ先回りしてしまいます。旋回しては戻って、また戻っての繰り返しです。

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Writer: 吉永陽一(写真作家)

1977年、東京都生まれ。大阪芸術大学写真学科卒業後、建築模型製作会社スタッフを経て空撮会社へ。フリーランスとして空撮のキャリアを積む。10数年前から長年の憧れであった鉄道空撮に取り組み、2011年の初個展「空鉄(そらてつ)」を皮切りに、個展や書籍などで数々の空撮鉄道写真を発表。「空鉄」で注目を集め、鉄道空撮はライフワークとしている。空撮はもとより旅や鉄道などの紀行取材も行い、陸空で活躍。

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