渋滞解消につながる鉄道の高架化、なぜ長い時間を要するのか? 相鉄の「星天」は30年(写真57枚)
長期化のさまざまな理由
しかし、連立事業は計画の着手から完成まで、非常に長い時間がかかります。
かつて横浜市会議員だった菅義偉内閣官房長官は、式典で「いまからちょうど30年前(1988年)、私のところに高架化の陳情が来ました」と話していました。要望が実現するまでに30年の歳月がかかったわけです。これは「星天」だけではありません。全国各地の連立事業でも長い時間がかかっています。地質が悪くて工事が難航することもありますが、長期化の理由はそれだけではありません。
線路を高架化する場合、通常は地上に設置された既設の線路の脇に建設用地を確保する必要があります。しかし、渋滞が発生する踏切は多くの場合、人口が集中していて地価が高い都市にあります。用地の買収に相当な費用がかかるだけでなく、大勢の人と交渉しなければなりません。そのため時間がかかるのです。
騒音や振動を懸念した反対運動が起きることもあります。小田急小田原線・梅ヶ丘~喜多見間の高架化では連立事業の認可取り消しを求める訴訟が提起され、最高裁が「近隣の住民も原告適格を有する」などとした判断を示しています。地権者だけでなく周辺住民にも配慮しながら進める必要があることも、時間がかかる理由のひとつになりました。
ちなみに、地上にある既設の線路の上に高架橋を建設する手もあります。これなら新たに土地を確保する必要がほとんどありません。ただ、地上の線路を走る列車の安全を確保するのが難しく、実際は列車が運行していない深夜の短い時間にしか工事を行うことができません。昼間よりも騒音や振動に気を遣う必要もあり、結局は時間がかかってしまうのです。
相鉄本線ではこれ以外にも、西谷~二俣川間で連立事業を行うことが考えられています。横浜市は地下化で踏切を解消したい考え。さまざまな課題を克服して早期に実現できるかどうか、注目されます。
【了】
Writer: 草町義和(鉄道ニュースサイト記者)
鉄道誌の編集やウェブサイト制作業を経て鉄道ライターに。2020年から鉄道ニュースサイト『鉄道プレスネット』所属記者。おもな研究分野は廃線や未成線、鉄道新線の建設や路線計画。鉄道誌『鉄道ジャーナル』(成美堂出版)などに寄稿。おもな著書に『鉄道計画は変わる。』(交通新聞社)など。
せっかく高架になっても、乗用車が橋脚にぶつかった程度で列車を止めるのやめてくれないかな?
ダンプとかならわからんでもないが、その程度で壊れる高架なんてありえない。
そもそも、なんの為に高架にしたのか?