鹿児島から所要25時間、本土と沖縄を結ぶ唯一の旅客フェリー 飛行機にない独自の需要
本土と沖縄や奄美大島を結ぶフェリーは、LCCの台頭により、いまや鹿児島発着を残すのみに。全区間で所要25時間にも及びますが、「ならでは」の需要に支えられています。
まだまだ大きい、奄美群島への離島航路という役割
本州から沖縄や奄美大島への旅は、いまや飛行機が一般的。成田空港や関西空港から、那覇や奄美大島へLCCが就航しており、運賃は片道1万円を切ることも普通です。以前はフェリーが「安く行ける」手段として認知されていましたが、LCCの前では価格の優位性を打ち出せず、2014(平成26)年には東京、2017(平成29)年には大阪と奄美・沖縄を結ぶ航路が相次いで旅客営業を休止。それぞれ、需要が堅調な貨物航路として再出発しています。
こうしたなかで、本土と沖縄を結ぶ唯一の旅客航路となったのが、鹿児島と奄美大島、徳之島、沖永良部島、与論島、そして沖縄本島を結ぶフェリーです。マルエーフェリーとマリックスラインの2社が交互に1便ずつ、毎日運行しており、全区間では所要25時間。最安の2等運賃で大人片道1万5030円(2018年11月末時点)です。寄港する各島には鹿児島からの航空便もありますが、フェリーは年間15万人程度が利用するなど旅客需要も比較的安定しています。
その理由のひとつに、鹿児島と奄美群島の島々を連絡する離島航路としての役割を担っていることが挙げられます。鹿児島から各島への航空便は、需要の小さい離島路線のため割引率が高いとはいえず、島の人々にとっては現在も、飛行機は「高いが急ぐ人向け」、フェリーは「時間が掛かるが安く行きたい人向け」という役割分担ができているのです。
途中寄港地で最大の島である奄美大島は、鹿児島とのあいだで航空便も多数運航されています。しかしフェリーの場合、鹿児島行きは奄美大島を夜に、奄美大島方面行きは鹿児島を夕方に出航し、船内で1泊して朝に目的地へ到着する効率の良いダイヤ。「県内の足」としての利便性も高いといえるでしょう。
考えてみれば沖縄県内を結ぶ路線が既に廃止になっているんだから、この航路が残っているのは奇跡に近い。