鹿児島から所要25時間、本土と沖縄を結ぶ唯一の旅客フェリー 飛行機にない独自の需要
「物流の大動脈」にもなっているフェリー
こうした離島航路としての役割があるため、鹿児島~沖縄航路には、公的なバックアップがなされています。たとえば、現在運航されているマルエーフェリーの「フェリー波之上」「フェリーあけぼの」、マリックスラインの「クイーンコーラル8」「クイーンコーラルプラス」はいずれも、国土交通省所管の独立行政法人である鉄道建設・運輸施設整備支援機構(鉄道・運輸機構)の「共有建造船制度」を利用して建造されています。多額の資金を要する新船への置き換えに、全国の離島航路で広く活用されている制度です。
運賃面でも公的な補助による割引がなされています。鹿児島県の奄美群島振興交付金を活用した「奄美・鹿児島交流割引」「奄美群島交流割引」や、鹿児島・沖縄両県による「奄美・沖縄交流割引」などが運賃表に反映されており、奄美諸島の島巡りや、沖縄との移動がお得になっています。
また、自動車やバイクも輸送できるのは、フェリーならでは。2等船室では、島々をバイクや自転車で巡ろうと、各地から集ったライダーが旅の話に花を咲かせる光景もよく見られます。
そして旅客輸送と並ぶ大きな役割が、鹿児島と奄美群島、そして沖縄を結ぶ「物流の大動脈」であることです。各寄港地の岸壁には大量のコンテナが積み上げられ、寄港の際には、何台ものフォークリフトがせわしなくコンテナの積み下ろしに走り回る光景が見られます。これらコンテナには生活物資や郵便物、宅配の荷物など様々なものが詰め込まれており、島々の生活や経済を支える物資の輸送も、この航路なくしては成り立ちません。
変わったところでは、奄美群島で育てられる肉牛もフェリーで輸送されています。牛は檻のような専用コンテナで運ばれ、港ではそのコンテナから牛を出し、トラックに引き込む作業を見かけることもあります。
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※記事制作協力:風来堂、石川大輔
考えてみれば沖縄県内を結ぶ路線が既に廃止になっているんだから、この航路が残っているのは奇跡に近い。