開業まであと3年「宇都宮LRT」のダイヤを予想してみた
完全な新線としては日本初のLRTといえる「宇都宮LRT」が2018年に着工。車両のデザインも発表され、3年後の開業を間近に控えています。詳細なダイヤはまだ発表されていませんが、少しマニアックな視点から開業時のダイヤを予想してみました。
宇都宮LRT「先行区間」の姿
日本では「次世代型路面電車」と呼ばれることが多い軽量軌道交通(Light Rail Transit=LRT)。海外では多くの都市で普及している公共交通ですが、日本でも既設路線の延伸や新型電車の導入などにより「LRT化」した路面電車が徐々に増えてきました。
そしていま、完全な新線のLRTが数年後の開業を目指し、準備が進められています。栃木県の県都・宇都宮市とその隣の芳賀町を結ぶ「宇都宮ライトレール」(宇都宮LRT)です。2018年の5月末に着工、7月には公募で決められた車両デザインが発表され、11月には車内の内装イメージも発表されました。
現在工事が進められているのは、2022年の開業が予定されている「先行区間」。JR宇都宮駅東口停留場から本田技研北門停留場(栃木県芳賀町)までの14.6kmで、19の停留場が設置されます。現在のところ、営業最高速度は40km/hの予定。片道は各停が44分、快速が38分と想定されています。全線が複線で建設され、併用軌道と新設軌道(専用軌道)の併用。専用軌道は鬼怒川を越える区間やテクノポリス停留場付近に設けられます。
快速運転が予定されているため、追い越し設備も沿線2か所に設置される予定。おそらく1か所は車庫も併設される運行拠点の平出町停留場になると推測されます。
このほか、ベルモール前、平出町、清原管理センター前、管理センター前の4停留場にはパークアンドライドや支線バス、地域内交通のターミナルといった結節点としての機能を持たせます。運賃は距離制を採用。初乗り150円、最高400円が想定されています。
宇都宮LRTを走る車両は、国内最大級の軽量軌道車両(Light Rail Vehicle=LRV)になります。別表(LRV比較表)に主要スペックをまとめましたが、この2660mmという幅や30m級の車体は福井鉄道のF1000形電車「FUKURAM」と同サイズ。製造メーカーもF1000形と同じ新潟トランシスです。そして軌間を1067mmとすることで、将来は既存の鉄道路線(東武宇都宮線など)への乗り入れの可能性に含みをもたせています。
さきほど福井鉄道のF1000形との類似点を書きましたが、もちろん違いもあります。エクステリアでは黄色をベースにしながらも、柔らかさのあるデザインとしました。そして内装には宇都宮の伝統工芸である宮染めをロールカーテンに用いています。
車内空間の使い方としては、車いすスペースや大型のフリースペースの存在が大きな特徴としてあげられるでしょう。このスペースのため、座席数は50席とF1000形に比べると少ないですが、定員数は160人と増えています。定員160人はLRVとしては国内最大の収容力を持つ車両となります。
さらに特徴的なこととしては、ICカードによる利用を前提とし、ICカード利用者は全部のドアから乗り降り可能とすることです。今まで運賃収受の観点から乗車ドアや降車ドアに制限を設けることが多かったですが、ICカードをベースにした信用乗車制を本格的に導入することで、乗降時間が短くストレスの少ない交通機関を目指しています。
公表資料からダイヤを予想してみる
あと3年で開業する予定の宇都宮LRTは、どのような姿で私たちの前に姿を現すのでしょうか。現在公表されている情報を基に、少しマニアックな視点から検討し、予想されるダイヤを作ってみました。
ダイヤ設定で前提となるのは、所要時間、停車停留場、運行本数、運用編成数、予想される需要です。
所要時間は各停タイプで片道44分、快速タイプで片道37~38分です。これは全線40km/hの運行を前提としたもの。今後、併用軌道の50km/h運行や専用軌道の70km/h運行が認可されれば、快速タイプで2~3分の短縮の可能性があります。
停車駅は快速タイプが6~7停留場となっており、後述するピーク時の需要予測から、JR宇都宮駅東口、ベルモール前、平出町、清原管理センター前、清原工業団地北、芳賀台、かしの森公園、本田技研北門の各停留所としました。
運行本数は「待たずに乗れる便利な公共交通」の実現という目標と清原工業団地や芳賀・高根沢工業団地の従業者へのアンケートから、朝ラッシュ時(朝6時台~9時台)と夕ラッシュ時(17時台~19時台)は各停タイプ5本、快速タイプ5本の1時間10本、それ以外の時間では各停タイプ1時間6本としています。
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Writer: 鳴海 侑(まち探訪家)
1990年、神奈川県生まれ。私鉄沿線で育ち、高校生の時に地方私鉄とまちとの関係性を研究したことをきっかけに全国のまちを訪ね歩いている。現在はまちコトメディア「matinote」をはじめ、複数のwebメディアでまちや交通に関する記事を執筆している。