香港都市鉄道のいま 日本と似ている設備やサービス、新線建設も進む(写真28枚)

さまざまな種類の交通機関がある香港。そのなかでも「MTR」と呼ばれる都市鉄道は日本とよく似ていますが、ユニークな運賃制度を採用するなど異なる部分もあります。大きく変わろうとしている香港の鉄道の「いま」を紹介します。

3エリアを縦横無尽に結ぶネットワーク

 日本から約2800km離れた香港。かつてイギリスの植民地だった中国特別行政区で、東京都の半分に相当する約1100平方kmに約750万人が生活しています。また、陸地の40%は国立公園となっており、開発が制限されています。そのため、人口密度が高く、鉄道網も発達しています。

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香港のMTRセン湾線を走る電車。日本の都市鉄道と似ている部分があれば異なる部分もある(2018年12月、鳴海行人撮影)。

 香港は大きく3つの場所に分かれます。ひとつは中国本土とつながっている九龍半島、ひとつは空港のあるランタオ島、そしてもうひとつは国際金融センターや繁華街の銅羅湾(コーズウェイベイ)のある香港島です。また、地域としては九龍半島がさらにふたつに分けられ、南の九龍エリアと「新界」と言われる北のニュータウンエリアに分かれます。

 この4地域には6つの軌道系交通機関があります。全エリアに広がるMTR(Mass Transit Railway)、新界のニュータウンを走るLRT(Light Rail Transit)、香港島の名物トラム(二階建て路面電車)、ビクトリアピークへ向かうケーブルカー(ピークトラム)、ランタオ島に架かるロープウェイ、そして2018年に開通した高速鉄道(広深港高速鉄道)です。

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MTRの西鐵線(2018年12月、鳴海行人撮影)。
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香港島名物として知られる2階建てのトラム(2018年12月、鳴海行人撮影)。
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LRTは香港北西部のみでの運行で1両編成だ(2018年12月、鳴海行人撮影)。
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LRTが走る北西部エリアのMTRCバス(2018年12月、鳴海行人撮影)。

 このうち、MTRとLRT、ロープウェイ、高速鉄道は、香港鐡路有限公司(港鐡あるいはMTRCと呼ばれる)が運営しています。

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MTRの駅が入る建物にはMTRの大きなロゴが入る(2018年12月、鳴海行人撮影)。
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MTRの路線図(2018年12月、鳴海行人撮影)。

 特に大規模輸送機関のMTRは、最長41.1kmの東鐵線を筆頭に11路線、194.7km、91駅の路線網を持つ香港の足で、約2000両の車両を保有、運行しています。その輸送人員は年間約17.7億人で、休日は1日に約575万人が利用。LRTと合わせると香港の公共交通の半数近いシェアを誇ります。その役割は都市内輸送、空港向け輸送(機場快線)、ニュータウンへ向けた対郊外輸送、中国本土と香港のあいだの都市間輸送と幅広いものです。

中国本土直結の高速鉄道も完成

 香港における鉄道開業の歴史は古く、1911(明治44)年の九広鉄路の開業までさかのぼることができます。その後、一度香港と中国本土では鉄道が分断されていましたが、1970年代に再び直通が始まり、1983(昭和58)年には電化が完了しました。

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MTR東鐵線では通勤電車だけでなく、機関車がけん引する中国本土からの直通列車も走る(2018年12月、鳴海行人撮影)。
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中国本土直通列車には2階建て客車を使っているものもある(2018年12月、鳴海行人撮影)。

 時を同じくして九広鉄道が香港政府の部門から九広鉄路公司(KCRC)に法人化され、1988(昭和63)年には香港政府の要請を受け、九龍半島北西部の屯門、元朗、天水園エリアの足となるLRTを開業します。同時に同エリアのバス営業権も譲り受け、バス事業も行うようになります。

 それとは動きを異にして、都市内交通機関の運営会社として香港地下鉄路公司が1975(昭和50)年に設立され、1979(昭和54)年に觀塘(クントン)~石硤尾(セッキプメイ)駅間で開通、翌年には九龍半島から香港島の中環(セントラル)駅を結ぶようになり、それからも九龍半島南部や香港島、そして1998(平成10)年に空港が移転したランタオ島へ路線網を広げていきました。

 こうして香港の鉄道は、おもに都市間および郊外での輸送を行う九広鉄路公司と、都市内交通の香港地鉄有限公司(2000年に香港地下鉄路公司から株式会社化にともない名称変更)の2社体制で運営されていました。しかし、2007(平成19)年に2社が合併して現在のMTRCに。同社が運営する路線は10路線になり、2016(平成28)年に開業した南港島線を加えて11路線になっています。

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高速鉄道が発着する香港西九龍駅(2018年12月、鳴海行人撮影)。

 2018年9月、中国本土とのあいだに新しく高速鉄道が開業しました。これまで九龍半島南部の紅ハム(ホンハム)駅から中国との境界に当たる羅湖(ローウー)駅まで45分かかっていましたが、西九龍駅から深セン市中心の福田駅まで14分で結ばれるようになり、上海や北京からの高速列車も直通するようになりました。

日本の鉄道とよく似た設備とサービス

 香港の鉄道のなかでも中心的な位置を占めるMTRは、日本の大都市における通勤鉄道と似ているところが多くあります。車体の長さは25m級が中心で、日本のJR在来線やおもな私鉄で使われている車両(約20m)より長いですが、左側通行で直流1500Vと交流25000Vが入り交じっているところや、分散車両による多頻度長編成による運行がほとんどという点は日本の鉄道にかなり近しく、親近感を覚える部分でしょう。

 電化方式は元の会社の所属により異なります。2007(平成19)年より前からMTRCだった路線は直流1500V、もとKCRCの東鐡線、西鐡線、馬鞍山(バアンザン)線は交流25000Vで電化されています。また、11路線のうち6路線が8両編成、東鐡線は12両編成による運行。ラッシュ時は一部郊外区間や機場快線を除けばおおむね2~4分間隔での高頻度運行が行われています。

 車両は英国、日本、韓国の各国メーカーが開発した車両が導入されていますが、東鐡線では英国メトロキャメル社製のつり掛け駆動車両が12両編成で走行しています。また、西鐵線では日本の近畿車輛や川崎重工業製造の車両が最高時速130km/hで駆け抜けます。

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東鐵線を走る英国メトロキャメル製車両。12両は圧巻だ(2018年12月、鳴海行人撮影)。
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東鐵線を走るメトロキャメル製車両の車内(2018年12月、鳴海行人撮影)。

 ほかにも日本と似ている点としてあげられるのが、全線で交通系ICカードのオクトパスカード(八達通)が使えることです。

 このオクトパスカードはFeliCaシステムを採用しており、日本のSuicaにかなり似ています。また、市内のコンビニなどでも決済手段となっているところも、日本の交通系ICカードと大きく似ている点です。

 このオクトパスカードを使った、日本とよく似た旅客サービスが東鐡線で提供されています。日本のグリーン車に相当する「頭等車両」の運賃支払い方法です。

 東鐡線は12両編成のうち1両が頭等車両となっており、乗車に際しては専用乗車券を購入するか、あるいはホームに設置されているICカード専用券売機にオクトパスカードを読み込ませることで頭等車の運賃を支払う必要があります。頭等車の車内はボックスシートになっており、自由席です。

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Writer: 鳴海行人(まち探訪家・フリーライター)

1990年、神奈川県生まれ。私鉄沿線で育ち、高校生の時に地方私鉄とまちとの関係性を研究したことをきっかけに全国のまちを訪ね歩いている。現在はまちコトメディア「matinote」や「公共交通×IT最前線レポート」などで交通やまちに関する記事を執筆中。趣味はローカル私鉄やローカルバスに乗ること。

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