逆風吹く「駅弁」守れるのか 進む事業者の淘汰と助け合い、危機から復活のケースも

日本最北の駅弁も復活 「助け合い」進む

 そうしたなか、地域で長年親しまれてきた駅弁を守るべく、事業者どうしの助け合いや、救済の事例も増えています。

 たとえば北海道の旭川駅で駅弁を販売する旭川駅立売商会は2004(平成16)年、同じ宗谷本線の終点である稚内駅の構内営業権を取得し、稚内駅での駅弁販売を復活させました。それまで稚内駅での販売をひとりで行っていた人が亡くなったためです。その後、2009(平成21)年には名寄駅(北海道名寄市)で営業していた角館商会が突然廃業し、宗谷本線の駅弁は旭川駅と稚内駅のみとなりました。

 愛媛県の松山駅では、2018年に廃業した鈴木弁当店の人気メニュー「醤油めし」を、岡山県の岡山駅で営業する三好野本店が再現し、松山駅での販売を復活させました。再発売にあたって三好野本店は、長年「醤油めし」を作り続けてきた鈴木弁当店の鈴木社長と念入りに試作を繰り返したといいます。

 復活した「醤油めし」はパッケージに「監修・鈴木弁当店」と記載されたことと、箸袋が「三好野本店」のものになった以外は、それ以前と変わりません。なお、三好野本店はそれ以前にも、高松駅の事業者だった高松駅弁を救済し、同駅の「アンパンマン弁当」「たこ飯」といった看板商品の販売を継続したこともあります。

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八代駅の駅弁「鮎屋三代」。製造業者は自社の危機を、クイズ番組に出演し賞金を得て乗り切った(宮武和多哉撮影)。

 ちなみに、少し変わった方法で危機を乗り切った例も。アユの甘露煮を1尾まるまる詰めた弁当「鮎屋三代」などで知られる八代駅(熊本県八代市)の事業者「より藤」は、2000年代に設備の老朽化でまとまった資金が必要となった際、社長が当時の人気テレビ番組『クイズ・ミリオネア』に出場しました。正解を重ねて賞金額をアップさせ、必要とした250万円を獲得すると、すぐに「ドロップアウト」(それ以降の問題に挑戦せず、賞金を獲得)。その堅実さは経営にも表れているのか、その後は出張販売などで地道に業績を伸ばしています。

【了】

【写真】「日本最北の駅」稚内駅の「最北駅弁」

Writer: 宮武和多哉(旅行・乗り物ライター)

香川県出身。鉄道・バス・駅弁など観察対象は多岐にわたり、レンタサイクルなどの二次交通や徒歩で街をまわって交通事情を探る。路線バスで日本縦断経験あり、通算1600系統に乗車、駅弁は2000食強を実食。ご当地料理を家庭に取り入れる「再現料理人」としてテレビ番組で国民的アイドルに料理を提供したことも。著書「全国“オンリーワン”路線バスの旅」など。

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