京急「だるま電車」800形が引退特別運転 伝統の「ドア」と「ライト」消える
「片開き」を採用し続けた理由
両開きドアは、ドアが開き始めてから閉まるまでのあいだに乗り降りできる人数が増え、停車時間を短くできるというメリットがあります。特に混雑が激しく、それが列車の遅れにつながりやすい通勤路線では効果的。京急本線も1960年代の混雑率が最大で200%を超えており、停車時間の短縮が課題になっていました。
そこで京急は、両開きドアの国鉄電車と片開きドアの自社の電車を横浜駅で撮影して分析。一定の時間内で乗り降りできる人数は両開きドアのほうが多かったものの、片開きドアに比べてひとり増えるだけで、大きな差はなかったといいます。
このため日野原氏は、両開きを採用するよりドアの数を増やすほうが停車時間を短縮できると考えました。1967(昭和42)年に登場した700形電車(2代目)は、片開きドアを採用しつつ、従来の旧1000形電車よりドアを増やして片側4ドアに。800形も引き続き、片開きのドアを片側4か所に設けました。
このほか、通勤電車のヘッドライトも、ほかの鉄道では先頭車の上にひとつだけ設置する方式から2灯設置する方式に変わっていきましたが、京急は800形まで「1灯式ヘッドライト」を採用。これも日野原氏の方針だったといわれています。
その後、両開きドアと2灯式ヘッドライトを採用した2000形電車が1982(昭和57)年にデビュー。これ以降の新型車両は、すべて両開きドアと2灯式ヘッドライトになり、4ドアの採用も800形で終了しました。
こうして片開きドアと1灯式ヘッドライトの営業用車両は徐々に減り、2019年6月13日(木)の時点で800形の823編成だけに。この編成は6月16日以降、予備車両として数日間だけ残りますが、その後は正式に引退する予定です。
なお、工事資材などを運ぶ事業用車両は800形より古い旧1000形の改造車で、1灯式ヘッドライトと片開きドアが引き続き残ります。
【了】
Writer: 草町義和(鉄道ニュースサイト記者)
鉄道誌の編集やウェブサイト制作業を経て鉄道ライターに。2020年から鉄道ニュースサイト『鉄道プレスネット』所属記者。おもな研究分野は廃線や未成線、鉄道新線の建設や路線計画。鉄道誌『鉄道ジャーナル』(成美堂出版)などに寄稿。おもな著書に『鉄道計画は変わる。』(交通新聞社)など。
もしかしてアンチクライマーも800系とともに絶滅か
京急は1978年初登場の車両群を「古い」といって全車廃車にした。なお京急が広告を出している関西大手私鉄は1983年初登場の車両群を「まだまだ新しいし使えるで!」と言って現在絶賛更新中……。